水谷隼、夢散 初戦敗退で五輪シングルス代表逃す「とにかく衰えている」
「卓球・ワールドツアー・グランドファイナル」(13日、鄭州)
男子シングルス1回戦が行われ、リオデジャネイロ五輪銅メダルの水谷隼(30)=木下グループ=は世界ランク6位のヒューゴ・カルデラノ(ブラジル)に1-4で敗れた。これで来月発表の世界ランクで日本勢3番手となることが確定。同2番手の丹羽孝希(25)=スヴェンソン=が東京五輪シングルス代表になることが確実となり、水谷は北京、ロンドン、リオと3大会続いていたシングルス代表の座を逃した。女子シングルスは伊藤美誠(スターツ)が4強入り。ダブルス準決勝は女子の木原美悠、長崎美柚組(エリートアカデミー)が決勝に進んだ。
集大成と位置づけていた東京五輪のシングルス代表を逃した水谷は、スッキリとした表情だった。「やっと(レースが)終わった。後悔は全くない」。2番手の丹羽を抜くには今大会で4強に入るしかなかったが、力負け。「大会前から状況は厳しかった。気持ちの整理はできている」。やり切ったという様子で結果を受け入れた。
「この1年モヤモヤして、今までにないくらい卓球が嫌いになった。卓球をしてるときが何よりつらかった」
リオ五輪で日本勢シングルス初のメダルを獲得し、卓球人気を押し上げた。東京五輪で最後に一花咲かせるつもりだったが、近年は16歳の張本智和(木下グループ)の成長や自身の不振もあり輝きを取り戻せないでいた。
2年前からは目の不調に苦しみ、歯車が狂いだした。サングラスを装備するなど試行錯誤したが、本来のパフォーマンスは取り戻せない。この日も得意のラリー戦で食らいつけず「自分がとにかく衰えてる。こんなのミスるんだとか。過去と比べて戦術も技術もかなり落ちている」ともどかしさを募らせた。
結果を出そうとしても、ボールが見えないストレスが意欲をそいだ。「一番大事な闘争心や勝利への執念がかなり欠如してきている。そこが(五輪切符を)つかみ取れなかった一番の原因」。“心技体”全てで衰えを認めざるを得なかった。
苦難の連続だったが、卓球界のカリスマはこのまま終わるわけにはいかない。東京五輪の団体戦代表に選ばれるチャンスは残っている。「まだ可能性はあるので前向きに考えたい」。最後の“狂い咲き”を誰もが待っている。