白井健三が復活への第一歩「1回引退した選手みたいな心境」 原点回帰でシライ躍動

 「体操 豊田国際」(14日・スカイホール豊田)

 種目別で争い、男子床ではオープン参加で出場した元世界王者の白井健三(23)=日体大大学院=が今年6月の全日本種目別以来、半年ぶりに演技を披露し、2位相当となる14・500点をマークした。今季、怪我で苦しんだ“ひねり王子”が復活の一歩を刻んだ。世界選手権代表の谷川翔(20)=順大=が14・600点で優勝。あん馬は同代表の橋本大輝(18)=市船橋高=が15・033点で、つり輪も同代表の神本雄也(25)=コナミスポーツ=が14・733点で制した。

 体操ができる喜びを、全身で表現した。「“懐かしいな”って。大げさにいえば1回引退した選手みたいな心境だった」。拍手とともに、半年ぶりに帰ってきた“庭”。冒頭に今季初めて自身の名前がつく大技シライ3(伸身リ・ジョンソン)を敢行し、力強く着地も決めると、リ・ジョンソンなど高難度技で畳みかけていく。最後もシライ(後方伸身宙返り4回ひねり)を決め、満面の笑みでのガッツポーズで“復活舞”を終えた。

 「今日は楽しみながらやろうと決めていた。絶対に伸身リ・ジョンソンはやろうと思っていたので、すごくいい1日になった」。

 今季は春先には左足首を痛め、夏には左肩痛を発症。苦しいシーズンだった。13年以来、名を連ねてきた日本代表からも落選。ライバルたちが世界の舞台で戦う姿が見ることができなかった。「テレビでもユーチューブでも見なかった。見ると動けない自分がショックを受けそうだったから」。ただ、休んでいる期間で、原点に立ち戻れた。

 出来栄えを示すEスコアが伸び悩んだ今季はどうしても採点傾向を意識し過ぎ、高難度の技を控えた。「どうやったら点が取れるかを考えすぎてきた」。戦いの場を離れて実感したのは「1番良い時は、自分のやりたい技をやった時の自分だった」。本来の白井健三の姿を取り戻したこの日、演技を終えた白井を大きな拍手が包み込んだ。

 力強く踏み出した第一歩。「まだまだしっかり戻していける可能性を感じた」。屈託のない笑顔に、充実感が宿る。体操ニッポンに欠かせない男が帰ってきた。

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