水谷、混合複に専念したい 美誠とコンビで銀「一番金の可能性ある」
「卓球・ワールドツアー・グランドファイナル」(14日、鄭州)
東京五輪で新種目として行われる混合ダブルスの決勝が行われ、水谷隼(30)=木下グループ、伊藤美誠(19)=スターツ=組は世界選手権金メダルの許シン、劉詩ブン組(中国)に2-3で惜敗した。初優勝はならなかったが、同種目で日本勢初の銀メダルを獲得。水谷は前日にシングルスの五輪切符を逃したが、団体戦代表に選ばれればこの種目に出られる可能性もあり、「一番金メダルの可能性があるミックス(混合ダブルス)に専念したい」と宣言した。女子シングルス準決勝は、伊藤が世界ランキング1位の陳夢(中国)に1-4で敗れた。
失意から一夜、卓球界のカリスマはただでは死ななかった。「自分にはミックスしかないと、懸ける気持ちは一段と強かった」。前日までは痛みを抱える腰にベルトを装着していた水谷だが、この日はリミッターを解除。「限界までいくぞと。大事な試合だし、決勝なので故障しても問題ない」。悲壮な覚悟をラケットに託し、世界王者ペアを2-0の土俵際まで追い込んだ。
金星にはあと一歩届かなかったが、伊藤に触発されて好プレーも連発。「自分で自分がすごいなと思って(次の動きが)遅くなっちゃって(笑)。自分でもビックリした」。自信を取り戻すには十分な内容で、「最後の1本までチャンスがあったし、改善すれば勝てる感覚も得られた」と充実感があふれた。
東京五輪の混合ダブルスでは、日本協会はあくまで団体戦1人を含む男女各3人の代表を決めた後、その中で相性を考慮し1ペアを決める。今回の混合ダブルスの成績も選考には直結しない。それでも前日にシングルス切符を逃し「このままでは終われない」と歯を食いしばる水谷にとって、ラケットを握るための最後の希望だ。
卓球キャリアのほぼ全てで、花形のシングルスに心血を注いできた。しかし、競技人生の終着駅に設定していた大目標を失った今は「シングルスは昨日負けた時点で終わり。ミックスに専念したい」と言い切るほど不退転の覚悟をのぞかせる。五輪代表に選ばれれば、団体戦に向けてシングルスやダブルスの力も必要だが、「ミックスに専念すれば(他への)自然とスキルも上がる」と断言。リオ五輪個人の銅、団体の銀を超える最後の花道へ新機軸を見いだした。