ザギトワも…10代で競技離れる露女子 過酷な体重調整に早すぎる世代交代で悪循環
フィギュアスケート女子の平昌五輪金メダリスト、アリーナ・ザギトワ(17)=ロシア=が14日、露放送局「チャンネル1」の中で一時的に競技活動を休止することを発表した。今季はもう試合に出場せず、アイスショーのみに出演する。露国内ではこのまま競技から引退するとの可能性が高いとみられている。
15歳で平昌五輪を制して、まだ2年に満たない中で、ザギトワもまた厳しい決断を強いられることになった。番組の中でザギトワは「私は既に勝利した。全てを手にしている」とした上で「これまでは常に何かが欠けている感じがしていた。その状態に戻したい」と五輪後、モチベーションの低下に苦しんでいたことを明かした。
昨季から成長期の体の変化への対応に苦労していた。今年3月の世界選手権では金メダルを獲得したが、今季は同門の16歳コストルナヤ、15歳のシェルバコワ、トルソワというトリプルアクセルや複数の4回転ジャンプを駆使する3人の新星の台頭もあり、先日のGPファイナルでは最下位の6位に終わっていた。
近年、露女子は10代半ばから20代に満たない中で、引退、もしくは事実上の引退ともいえる長期間の休養に入る選手が増加してきている。14年ソチ五輪を17歳で制したソトニコワは、翌シーズンに不調に陥ると、度重なるケガで競技から遠ざかり続けている。同五輪の団体戦金メダルメンバーのリプニツカヤも、15歳で出場した五輪後は体の変化に苦しみ、厳しい戦いが続いた。拒食症を発症し、19歳で引退の決断を下した。ザギトワらの1つ上の世代で、2015年にジュニアGPファイナルなどを制し、将来を嘱望されたツルスカヤは、負傷に苦しみ17歳で引退している。
体重が軽い10代前半から高難度のジャンプを駆使して頭角を現し、一気にトップスケーターとなる選手が増えている一方で、その後、体の変化に伴い思うようにジャンプが跳べなくなり、さらに下の世代の台頭により戦う場所を失う選手が後を絶たない。
ザギトワも五輪後は10センチ近く身長が伸びるなど、成長への対応に苦戦した。優勝した3月の世界選手権後に露放送局のインタビューで「100グラムも超えないように、1日に3回計量する時間がありました。体重をとても気にしていて水をほとんど飲まなかった。一口飲んでそれを吐き出した。私たちのスポーツは複雑です。体重が増えると、すぐにジャンプテクニックが変わってしまい、跳べなくなる」と、苦悩の日々を語っていた。
リプニツカヤやツルスカヤ、そしてザギトワを指導するエテリ・トゥトベリーゼコーチの門下生はその象徴となっており、国内・海外から「使い捨て」、「ベルトコンベヤーのよう」との批判の的になっている。
一方でこのロシアの“魔のサイクル”にあらがう選手も出てきている。
エテリ門下生だった平昌五輪銀メダリストのメドベージェワは、五輪後にカナダに拠点を移し、ブライアン・オーサーコーチに師事。栄養をしっかり取ることで体重は5キロ増加したが、今年3月の世界選手権では気迫あふれる演技で銅メダルを獲得した。
12年ユース五輪金メダルなど10代前半から輝きを見せていたトゥクタミシェワも、不振も経験しながら15年には世界選手権で金メダルを獲得。22歳になった現在もトリプルアクセルを跳び、練習では4回転ジャンプも成功させるなど進化を続け、存在感を放っている。
17歳のザギトワの決断は、フィギュア界に大きな衝撃を与えた。ジャンプ偏重の流れに一石を投じるべく、米メディアのNBCは表現力などを示す5項目の構成点を女子は現在のSP0・8倍、フリー1・6倍から男子と同じSP1倍、フリー2倍への変更を議論する記事を掲載。成熟した女性スケーターが戦える土壌を作るべきという声も上がっている。