充実の“大魔王”伊藤美誠「まだまだ伸びしろがある」悲願の金メダル夢ではない

 2020年7月、56年ぶりの自国開催となる夏季五輪が首都・東京で幕を開ける。日本選手団は金メダルの目標数を1964年東京五輪、2004年アテネ五輪の16個を上回る史上最多の「30個」に設定。柔道、バドミントン、卓球、競泳など近年の国際大会で功績を残している競技に加え、サーフィン、スケートボードなど今大会から採用された新競技にも大きな期待が集まっている。東京五輪の「主役」となるであろう選手たちを特集する。

 エースとしての貫禄すら漂ってきた。卓球女子の伊藤美誠(19)=スターツ=は1年間の代表レースを日本勢トップで走り切り、東京五輪代表切符を確実にした。19年12月には世界ランクでも自己最高の4位をマーク。「五輪で優勝という目標があるが、その前に世界ランクを上げることだったり、中国選手に勝つ回数も増やさないといけない」と限りない高みを見据えている。

 もうその実力の真贋(がん)を疑う者はいないだろう。19年は1月の全日本選手権で2年連続の3冠を達成すると、国際大会では中国以外の海外選手に一度も負けなかった。さらに、前年12勝8敗と勝ち越した対中国勢との対戦成績も10勝14敗。勝率5割こそ切ったものの、相手から“大魔王”と警戒される中で互角に戦い続け「負けない選手に近づいてきたと思うし、どんな状態でも勝てるようになってきている」と自信を深めた1年となった。

 いつ何時、誰とやっても勝てる選手になることを公言している。以前は調子によって結果に波があったが、「調子が悪くても勝てるように」と練習から地力の底上げに努めた。「何でもできるようになりたい」とオールラウンドプレーヤーとして進化を模索中だ。

 東京五輪に向けて周りがどれだけ騒ごうとも「目の前の1戦1戦を楽しみながら、全力を出し切ることが目標」という信念を曲げることはない。「まだまだ伸びしろがあると感じて、自分のことだけど楽しみ」。心技体に充実している驚異の19歳にとって、日本卓球界悲願の金メダルも夢ではない。

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