阿部詩、人生を全て懸ける 20歳で迎える東京五輪へ熱き思い語った

 2020年がいよいよ幕を開けた。東京五輪の主役候補筆頭で、柔道女子52キロ級で日本勢初の金メダルを狙う阿部詩(19)=日体大=が新春インタビューに応じ、勝負の1年に向けて「自分の人生を全て懸ける」と並々ならぬ決意を示した。10代最後となった19年は地元神戸から上京し、世界選手権で2連覇を達成。ただ、11月のグランドスラム(GS)大阪大会では決勝でブシャール(フランス)に敗れ、五輪代表を決められなかった。めまぐるしい1年を「喜怒哀楽」で振り返ってもらいつつ、20歳で迎える東京五輪への思いを改めて聞いた。

 -1カ月ほどたって、GS大阪の結果はどう受け止めている。

 「負けが久々(1年7カ月ぶり)で、国際大会で海外の選手に負けたのも初めての経験だったので、こんなに悔しいのかと。お兄ちゃん(阿部一二三)が、先に試合して勝ったり、代表の内定が懸かって自分で自分を追い込みすぎていたというか。自分が弱かったと言ってしまえば、それだけなんですけど。油断があったと思います。五輪代表が決まらなかったから残念とかじゃなく、単純にその負けが悔しい。冷静になって振り返ると、負ける要素は何点かあったなと思ったので、次につなげたいです」

 -2019年を「喜怒哀楽」で振り返って、1年間の「喜」は。

 「喜び…まあ世界選手権で優勝できたことはうれしかったと思いますね。あそこでは絶対に負けられなかった。あれが昨年1年一番印象に残ってます…いや、(GS大阪の)負けも一番残ってるな」

 -19年の「怒」は。あまり怒っている印象はないが。

 「怒り?うーん、怒らないですね(笑)」

 -世の中に対しては。

 「ああ、ニュースとか見てめっちゃ怒ることはありますね(笑)。虐待とか。めっちゃテレビに文句を言ってます。虐待とか見てたら許せない。すごいテレビに怒ってますね」

 -では「哀」は。

 「(左肩の)ケガで初めて(復帰に)2、3カ月かかったので。2月に負傷して5月まで練習したくてもできなかった。悲しいっていうか、なんとも言えない苦しさというか。初めて経験したので」

 -ケガの経験はどんな意味があった。

 「体のケアの大切さ。練習をがむしゃらにやるだけじゃなくて、しっかり考えてやれる部分とか本当に勉強になったので。今までは(練習を)やり過ぎている部分だったり、自分でセーブできなかったんですけど。そういう部分ではまた一つ成長できたのかな」

 -19年の「楽」は。

 「何げない日々で、みんなとカラオケではしゃいでるときとかが一番楽しいですね」

 -昨年は上京もして大学に入り新たな友人もできたが、最初は新しい環境に戸惑った。

 「そうなんですよ。最初はみんな『あ、阿部詩や』っていう感じで(遠目から)見ているので、自分もそんなにぐいぐいいく感じでもなくて。でも自分らしくいたら自然と周りも集まってくる。今まで通りいた方がいいんかなと。色んな意味で一歩成長できた1年だったなと思います」

 -環境の変化に戸惑うのは世の中の“大学1年あるある”だが、トップアスリートも普通の大学生。

 「ははは。大学生ですよ、意外と(笑)」

 -関西弁は。

 「合わせるときは合わせますけど、家に帰ったら関西弁やし、関わる人が関西人が多いので結構関西弁です」

 -マクドナルドは「マクド」か「マック」か。

 「それはもう『マクド』ですね(即答)。『マック』は出ないですね。もう染みついてるので(笑)」

来月の欧州大会で決める

 -2020年はどんな1年にしたいか。

 「小さい頃から一番の目標としていた年なので、自分の人生のすべてを懸ける思いで、誰よりも強い気持ちで五輪に挑みたいです」

 -五輪代表を決められずに年を越したが。

 「それで良かったんじゃないかなと、今となっては。気持ちを切らさずに悔しさ、もどかしさを持ちながら年を越せるので、まだ神様が(代表に)決まるのは早いということなのかなと。ポジティブに生かしたいです」

 -まずは2月の欧州大会で代表を決める。

 「そうですね。でもあまり(代表を)決めることは意識せず、一つ一つの試合をしっかり勝つという思いを持ってやりたいです」

 -五輪直前(7月14日)には20歳になる。

 「誕生日に余裕はないかもしれないですけど、20歳で五輪を迎えられることは、一番いい時期だと思っているので頑張りたいです」

 -前まで憧れていた五輪と、目前まで迫っている五輪というのは見え方は違うか。

 「4年前は雲の上だと思っていたものが、本当に目の前にきている。でも届きそうで届かないのが五輪だなと。それまでは意外とすんなり(いけるかも)みたいな感じもあったんですけど、そこからの一歩が大変。そのチャンスをつかめるように、どうしたらいいのか日々考えながら生活しています」

 -兄の一二三選手も苦しい状況になっている。

 「自分も『一二三が東京五輪(出場)は余裕やろ』って思って見ていたんですけど、いろいろ試練があるんだなと。でもお兄ちゃんなら絶対にやってくれると思っています」

 -五輪までは我慢していることは。

 「あまりこれと言ってないですね。ただ、五輪が終わったらどうなるか、自分でも怖いです(笑)」

 -タピオカミルクティーを我慢したりは。

 「あ、飲みますね!めっちゃ頑張ったときとか、土曜日に飲みます(笑)」

 ◆阿部 詩(あべ・うた)2000年7月14日、神戸市兵庫区出身。2人の兄の影響で5歳の時に兵庫少年こだま会で柔道を始めた。夙川学院高1年時の17年GPデュッセルドルフ大会で国際柔道連盟主催のワールドツアーを最年少制覇。同年GS東京大会では兄一二三と兄妹優勝を果たした。初出場した18年世界選手権はオール一本勝ちで一二三と同日に金メダルを獲得。19年世界選手権で2連覇した。18年度デイリースポーツ制定「ホワイトベア・スポーツ賞」受賞。得意技は袖釣り込み腰、内股。日体大1年。158センチ。

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