関学大・鳥内監督、監督生活に別れ「俺は終わるけど、全員続いていかなあかん」
「アメリカンフットボール・ライスボウル、富士通38-14関学大」(3日、東京ドーム)
学生王者の関学大が14-38で富士通に敗れ、2002年以来の日本一奪還はならなかった。試合終了間際にこの日、2つ目のTDを奪う意地は見せたが、パワー、スピードで上回る社会人王者に及ばなかった。今シーズン限りでの退任を表明している鳥内秀晃監督(61)は、28年間の監督生活に別れを告げた。富士通は4年連続5度目の日本一。
最後の最後まで関学大は勝負をあきらめなかった。7-38で迎えた第4Q残り38秒。QB奥野耕世(3年)からWR鈴木海斗(3年)へのTDパスなどで7点を返し14-38。続くキックオフをオンサイドキックでマイボールにし、再び攻撃して残り5秒でゴール前1ヤードに迫った。
だが、RB三宅昂輝(3年)のランはTD寸前で富士通の分厚い守備陣に止められた。その瞬間、試合終了。この試合を最後に退任する指揮官の監督生活も終わりを告げた。
ラストプレーでTDが取りたかったかと問われた鳥内監督は「そやねえ」と苦笑いを浮かべ「まあしゃあないな」と続けた。力の差がある社会人王者に立ち上がりからパワー、スピードとも圧倒された。つまらない反則などミスが出ては、勝てる相手でない。それは監督が誰よりも分かっていた。
自身の最終戦を前にしても、監督らしさを貫いた。ライスボウル前夜、4年生とのミーティングで「甘い」と厳しい言葉を投げかけた。生半可な気持ちでぶつかっては故障の可能性もある危険な相手だ。主将のDL寺内芳樹(4年)らに宿舎の部屋を回らせ、1年から4年まで全メンバーに同じ覚悟で試合に臨むよう求めた。その思いが最後の猛アタックにつながった。
かつてチームを率い、08年末に亡くなった父・昭人さんから1992年の監督就任時に言われた言葉は「4年生を男にしてやらなあかん」の一言だけ。4年生が目標を達成した笑顔を見ることを最高の喜びとして過ごしてきた28年間だった。
「俺は終わるけど、ファイターズは全員続いていかなあかん。相当な覚悟で1年間やらへんかったら、ここではできへん」。試合後、涙にくれる選手らに、そう話した。今年も来年も、強いファイターズであり続けるためのメッセージを残して、闘将が去った。