箱根駅伝、厚底革命で超速 新記録20発!7区間で区間新「一つ上のステージに」
「箱根駅伝・復路」(3日、神奈川県箱根町芦ノ湖駐車場~東京・大手町)
絶好の気象条件に加え、長距離界を席巻しているナイキ社の厚底シューズ「ズームXヴェイパーフライネクスト%」の影響が大きく、全10区間のうち、7区間で区間新記録が飛び出す超高速レースとなった。各区間、往路、復路、総合記録で生まれた新記録は実に20個。かつて水泳界で新記録を連発し、後に禁止された高速水着「レーザー・レーサー」をほうふつとさせる技術革命が、伝統の箱根路で猛威を振るった。関係者からは想定以上の高速化に驚きと、戸惑いの声が漏れた。
塗り替えられた記録の数と、その内容が異質さを色濃く映し出す。今大会で生まれた新記録は実に20個。青学大のVタイムは従来のものを6分46秒も更新した。前代未聞の超速戦に、東洋大の酒井監督は「箱根が一つ上のステージに入った。違う景色を感じた」と、驚きを口にした。
今大会では約8割の選手が着用し、最終10区で区間新をマークした創価大・嶋津を除けば、記録達成者のほとんどがピンクか左右色違いのナイキの厚底シューズだった。カーボンプレートによる推進力を得られ、足の負担が少ないとされる同シューズ。これまでであれば無謀なハイペースで入っても、終盤まで“足がもつ”。山下りの6区で区間新をマークした東洋大の今西駿介(4年)は、昨年で卒業した小野田勇次(当時青学大)の区間記録を上回った。「人間じゃない」と尊敬していた年上のライバルを記録で超えたが「出ちゃった感じ。小野田さんを超えたとは思っていない。靴とかもあるので」と、複雑な表情を浮かべた。
もちろん個々の適性もあるが、ある大学の指導者は「履かないと勝負にならない」と率直に明かす。大学が契約を結ぶメーカーもある中で、苦渋の選択でナイキを着用する選手もいる。状況は08年北京五輪前後に、世界新を連発し、競泳界を席巻した高速水着「レーザー・レーサー」騒動に似る。同水着はその後禁止された。ナイキ厚底シューズも国際陸連が調査する可能性が取りざたされている。厚底効果について、青学大の原監督は「あえてノーコメントにさせてください」。放送した日テレもシューズの話題に触れることはほとんどなかった。用具の進化に後押しされた記録ラッシュに、複雑な思いが垣間見えた。