青学大2年ぶり総合V 原マジックで“ダメ世代”4年生を更生「大成功!」
「箱根駅伝・復路」(3日、神奈川県箱根町芦ノ湖駐車場~東京・大手町)
青山学院大が10時間45分23秒の大会新記録で2年ぶり5度目の総合優勝を果たした。2位に1分33秒差をつけてスタートした復路では一度も先頭を譲らず、2連覇を狙った東海大の猛追を退けた。6区から10区まで区間5位以内での安定した走りで逃げ切り、原晋監督(52)の采配はズバリ。今大会掲げた「やっぱり大作戦」を「大成功!」と喜んだ。
2年ぶりに新緑のたすきが大手町に1番で帰ってきた。アンカーの湯原慶吾(2年)が勝利を確かめるように何度も右手を突き上げてゴール。待ち構えた原監督は5度胴上げされると、笑顔で顔をくしゃくしゃにした。掲げた「やっぱり大作戦」は「大成功!」と声を弾ませた。
2015年に初優勝し、指揮官の大胆な言動と明るいキャラクターで駅伝界に一大旋風を巻き起こした。当初は異端だったが、優勝するごとに雑音をかき消し、連覇は4まで伸ばした。だが、昨年は往路6位に沈み、総合2位。結果が伴わなければ出るくいは打たれる。「原の活動そのものを否定する人もいた」。発言力を取り戻すには、再び頂点に返り咲くしかなかった。
覇権奪回へまずは自身の指導方針を見直すところから始まった。近年は学生の自主性に任せてきたが、主体性に乏しかった現4年生任せでは瓦解(がかい)は必至。3月に方針の違いから上級生3人が離脱。5月には4年生が寮則を破り、積もりに積もった後輩の不満も爆発した。
不始末を主将の鈴木塁人(4年)が代表して謝るも、原監督は「俺が後輩だったらついていきたくない」と一蹴。これまでの放任的な指導を一新し「君たち覚悟あるの?」と常に訴えかけ、自立心の足りない4年生に変革を求めた。
4年生も呼応した。夏合宿まで本来1年生が行う食事当番やゴミ出しなどの雑務を行って反省を示した。「コミュニケーションを取るきっかけにもなった」と鈴木。誠意を見せ続けることで深まった溝を修復した。夏合宿前には留学していたエース吉田圭太と神林勇太の3年生コンビも帰国。練習量も増えていき、チームはようやく一つになっていった。
10月の出雲駅伝で5位、11月の全日本駅伝で2位と結果は振るわなかったが、チーム最大の目標は箱根での王座奪還。昨年失敗した采配も、今年は的確に選んだ。エース区間の2区に就任以来初めて1年生を抜てきしたが、「ピタッとはまりました」。箱根未経験者を6人も起用しながら、力を引き出すタクトの鋭さは健在だった。出場した4年生は4人共好走し、指揮官の親心に応えた。雷を落とされ続けた鈴木も「あれだけ怒られて優勝したのは本当にうれしい」と喜びをかみ締めた。
往路で120%だったやっぱり指数は「500%!」と原監督。「陸上界のために情報を発信していくためにも、勝たなければならなかった」。王者奪還で、再び時代を築きあげる。