豪栄道が引退会見、貫いた「大和魂」 「自分の中ではやりきった気持ち」
初場所限りで現役を引退した元大関豪栄道の武隈親方(33)が29日、国技館内で引退会見に臨んだ。大関昇進伝達式の際に口上に織り込んだ「大和魂」を貫いた土俵人生だったと振り返った。
師匠の境川親方(元小結両国)とともに出席し、「これまで私を支えていただいた、多くの皆様方に、この場をお借りして御礼の挨拶をさせていただきます。どうもありがとうございました」と挨拶した。引退に際して、「自分の中ではやり切った気持ちがあるので、今は満足しています」と思いを述べた。
負け越しが決まった12日目の夜に師弟で話し合いを持ち、覚悟を決めていたという。残りの3日を「集大成」と位置づけ、土俵に立っていたと明かした。来場所は地元大阪で行われるため、周囲からの説得もあったというが、「数年前から、大関から落ちたら引退しようと心に決めてやっていましたので。今場所で大関を落ちることが決まって、来場所、相撲を取る気力がなくなったというのが(大きかった)」と心境を語った。
大関昇進の伝達式の際には、「これからも大和魂を貫いてまいります」と口上を述べた。貫いた信念として「やせ我慢」を挙げた武隈親方は、「つらいときとか苦しい時に、人にそういう所を見せないように」努力してきたという。けがにも泣かされた土俵人生で、昨年九州場所も左足首の負傷で休場していた。それでも、「土俵に立つっていうことは、自分がその時、最高の状態だと思ってやっているので」とし、この日も言い訳はなかった。
大阪府寝屋川市出身。埼玉栄高から境川部屋へ入門し、本名の澤井として05年初場所で初土俵を踏んだ。所要11場所、06年の九州場所で新十両に昇進。ここで、しこ名を豪栄道に改めた。
07年秋場所で新入幕、08年九州場所で新三役(小結)。12年夏場所以降は関脇にとどまり続け、14年名古屋場所後に大関に昇進した。
大関在位は同年秋場所から33場所で、歴代10位。負傷に泣かされることも多く、8度のかど番を乗り切り、そのうちの1度にあたる16年秋場所では全勝優勝を果たしている。かど番での全勝優勝は史上初で、この日の会見では一番思い出に残る取組を、「優勝を決めた一番(玉鷲戦)ですかね。それまで大関に上がってから、情けない成績で、いろんな人に、師匠をはじめ、いい思いをさせてあげられなかったので、優勝したことで、皆さんがすごい、自分のことのように喜んで。それが一番よかったです」と振り返っている。
9度目のかど番で迎えた今年の初場所で5勝10敗と負け越し、大関からの陥落が決定。引退を決断した。