阿部一二三の苦境Vに山下泰裕会長も感動「よく頑張った」4月決戦、両雄に期待
「柔道・グランドスラムデュッセルドルフ大会」(23日、デュッセルドルフ)
全日本柔道連盟の山下泰裕会長(62)が現地で取材に応じた。今大会は東京五輪代表選考会の一つとして行われているが、男子66キロ級で優勝し五輪代表争いに踏みとどまった阿部一二三(22)=日体大=について「苦しい戦いの中で、よく頑張った」とねぎらいの言葉を送った。
今大会で負ければ五輪が絶望的だった阿部は21日に登場し、重圧からか前に出られず、初戦から苦戦続きだったが、ワンチャンスを逃さない執念の戦いで勝ち切り、望みをつないだ。試合を見守った山下氏は「かなり追い込まれた状況の中での試合だったのではないか。正直、こんな苦しい阿部一二三の試合は初めて見ました」と明かしたが、苦境の中で勝ち切った姿に感動したという。
特定の選手に肩入れしないように、普段は選手に声を掛けないようにしているが、今回は思わず表彰式後に阿部に歩み寄って「苦しい試合の中でよく頑張った」とねぎらいの言葉を掛けた。「彼らしい思い切りのいい戦いはあまり見られなかったが、この苦しい戦いを勝ち抜いたことは必ずこれからの彼の競技人生に生きると思う」と柔道家としての深化にも期待した。
阿部が今回優勝したことで、19年世界王者の丸山城志郎(26)=ミキハウス=と並んだ形となり、五輪代表を懸けて、最終選考会である全日本選抜体重別選手権(4月、福岡)で決着をつけることが決定的となった。
山下氏は「このクラスは丸山、阿部、世界のトップ2人(が争うが)、五輪は1人しか出られない。本当に厳しい戦いだなと思う」と勝負師としての心情をおもんぱかりつつ、「福岡で決定になると思うが、我々も緊張しながらこの試合を見守る」と両雄にエールを送った。