東京五輪Q&A 中止は?延期は?新型コロナ感染拡大でどうなる
世界的な感染拡大を続ける新型コロナウイルスは5カ月後に迫った東京五輪・パラリンピックの開催にも影を落としている。国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は4日、スイスのローザンヌで開かれた理事会後に記者会見し、東京五輪の中止や延期の可能性は議論しなかったと明らかにし「成功に向けて尽力する」と改めて強調した。一方で、海外メディアや国内外の世論からは懸念の声が日々高まっている。中止、延期にはどんな課題があるのか。Q&A形式でまとめた。
Q.現在、新型コロナウイルスによる五輪への影響は。
A.代表争いの懸かった五輪予選や選考会の中止・延期や開催地変更が相次いでいる。卓球やバドミントン、ゴルフなどでもポイントの懸かる大会が続々と中止となっている。特に最大の感染者を出している中国は、他国から入国禁止や制限などを受け、大会に参加できないケースも多発しており、五輪レースとしての公平性を保てなくなってきている。
また五輪の準備の面でもボランティア研修が5月以降まで延期となるなど停滞や遅れが出始めている。
Q.中止、延期の場合、決定はどこがするのか。
A.五輪の運営については、国際オリンピック委員会(IOC)がすべて最終決定権を持っている。2013年9月に東京都、日本オリンピック委員会(JOC)が結んだ「開催都市契約」には、「本大会参加者の安全が理由の如何を問わず深刻に脅かされると信じるに足る合理的な根拠がある場合」や「本大会が2020年中に開催されない場合」などに、IOCが単独で大会中止を判断できると規定されている。
Q.中止の場合、日本が施設建設などに費やしたお金はどうなるのか。
A.IOCが中止を判断した場合も、日本側は補償や損害賠償を求める権利は放棄することが「開催都市契約」で規定されている。組織委員会の発表によると、大会経費は1兆3500億円(組織委6030億円、東京都5970億円、国1500億円)。
Q.過去に中止・延期になったオリンピックはあるのか。
A.夏季五輪は過去3回の中止がある。1916年のベルリン五輪(第1次世界大戦)、40年の東京五輪(日中戦争)、44年のロンドン五輪(第2次世界大戦)で、ロンドンは4年後の48年に繰り越されて開催された。冬季は2回で、40年の札幌五輪(日中戦争)、44年のコルティナダンペッツォ五輪(第2次世界大戦)。過去計5度の中止は、いずれも戦争によるもので、それ以外の理由での中止はない。延期の前例はない。
Q.中止・延期の可能性は?
A.完全中止や季節をずらした延期は考えづらい。IOCは五輪開催によって巨額の放映権料を得ている。放映権料は41億5700ドル(約4600億円)で、IOC収益の8割を占めている。中止となれば損害は計り知れない。同様の事情で秋~来春への延期も考えづらい。IOCは米国の放送局・NBCと2014年ソチ冬季大会から32年夏季大会までで約120億ドル(約1兆3000億円)の契約を結んでいる。競技日程などで米国の放送局の意向が反映されやすいのはこのためだ。米国では9月に入るとアメリカンフットボールなどの人気プロスポーツが開幕。季節をずらした延期には、放送局が難色を示すとみられる。
Q.代替地での開催はあり得るのか。
A.現在、市長選が行われている英・ロンドンで候補者の一人が代替開催の可能性に言及した。ただ、12年の五輪開催からすでに8年が経過。仮設施設などは取り壊されており、事実上不可能という見方が強い。