桃田賢斗が事故後初の復帰会見「五輪で金狙う」 笑顔で報告、実戦はトマス杯を目標に

 1月に遠征先のマレーシアで交通事故に巻き込まれて負傷し、2月に右目眼窩(がんか)底骨折の手術を受けたバドミントン男子世界王者の桃田賢斗(25)=NTT東日本=が6日、練習を再開したことを受け、都内で会見を開いた。事故以来、一連の経緯について語るのは初めてだったが、約40分間にわたって笑顔を交えた明るい表情で現状を報告し、「今回の経験でたくさんの人に激励してもらい、今は東京五輪で金メダルを狙っていきたいと思った」と意欲を明かした。

 大好きなバドミントンに復帰できる喜びにあふれ、笑顔にあふれる復帰会見だった。2カ月ぶりに公の場に現れた桃田は、グレーのジャケットにえんじ色のネクタイを締めて登場。「少しずつ練習に取り組めて充実感があるし、体のキレも少しずつ戻ってきている」。右目の目尻には手術した痕が見られたものの、1月は眉間に痛々しく残っていた傷痕は目立たなくなっており、精悍(せいかん)さが戻った明るい表情で回復状況を語った。

 2月8日の術後は香川県の実家で静養し、同月末には練習再開にこぎつけた。「これだけ長く競技から離れたことがなかったので、今は羽根を打つのが楽しいし充実している」。そう目を輝かせ、「コートに立つとどうしても動きたくなるので、今はセーブするのが課題」と冗談を交える余裕ものぞかせた。

 ただ、笑顔を取り戻すまでは壮絶な日々を過ごした。目の前で運転手が亡くなるせい惨な事故の後、一度は練習を再開したものの、眼球を動かすとものが二重に見えることから再検査したところ骨折が判明。「バドミントンができる体に戻れるか不安もあったし、手術もうまくいかなかったらどうしようと」。不安ばかりがよぎる中、背中を押してくれたのは手紙やSNSで寄せられた応援メッセージで、復帰に際して会見を開いたのも激励に応えるためだという。

 出場権を確実にしている東京五輪に対する意識も変わった。「目の前の試合に全力で取り組んだ延長線にある」とあまり明言してこなかったが、事故や手術を経て変化。「多くの人に激励してもらい、今は東京五輪で金メダルを狙っていきたいと思った」とこの日は自ら“金メダル”という大目標を口にした。

 「もしかしたら前みたいにプレーすることができないかもしれない中で期待してくれる。バドミントン界のためにも誰もが注目される大会で活躍し、いろんなことを伝えていける選手になれればと」

 実戦復帰のめどは立っていないが、5月の国別対抗団体戦・トマス杯(デンマーク)を一つの目標にリハビリを続ける。「すぐにでも試合に出たいが、今まで以上に強くなって戻るためにも今は焦らずにやりたい」。恩返しのためのターゲットは決まったからこそ、じっくり腰を据えて完全復活への地道な一歩を踏み出していく。

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