伊藤美誠 わざと失点は“悪習”「逆に失礼」五輪女王に11-0達成
卓球女子で東京五輪代表の伊藤美誠(19)=スターツ=が9日、ワールドツアーのカタール・オープンを終えて成田空港に帰国した。混合ダブルスで優勝し、シングルスでも準優勝と躍進。気持ちを自由に解放して試合に臨めているといい「頭が回転するし、勝手に足も動く」と手応えを示した。
圧巻だったのは、リオ五輪金メダルの丁寧(中国)に4-0でストレート勝ちしたシングルス準決勝だ。「すごく楽しかったし、何でも入っちゃう感じ。1ゲーム目から自分のプレーができて楽しかった」。第3ゲームには11-0という“ラブゲーム”も完成させるなど会心の内容だった。
卓球界では以前、中国選手を中心に、10-0からはラブゲームにならないように、相手への配慮でわざと1点を献上するという“暗黙のルール”があった。伊藤自身も以前、10-0になった際はわざとミスすることを公言していたこともある。ただ、昨年の世界選手権で女子シングルスを優勝した劉詩ブン(中国)が、2度もラブゲームを決めたことを受けて、卓球界の潮流が変わった。
伊藤は「今まではミスして(わざと)1点を上げるというのはあったんですけど、世界選手権の決勝を見て(意識が変わった)。劉詩ブン選手は『お互いこの試合に懸けてやっているんだから、そういうのは逆に失礼』と言っていた。それを思い出して、世界選手権以降はちゃんと(相手と)対等に戦おうと思ったし、今回丁寧選手とやったときに1点を取らせてあげてじゃなく、自分のプレーをしっかりしようと思いました」と“悪習”を過去の遺物と考えるに至った経緯を明かした。
今回は丁寧に完勝したものの「(中国選手の中で)一番対戦回数が多い選手で、お互いやり慣れている」というように、通算では4勝11敗と負け越しているだけに慢心はない。決勝では世界ランク1位の陳夢(中国)に敗れており、「中国選手やいろんな選手に対応できる力をつけたい」と、卓球王国と対等に戦える地力を引き続き求めていく。