競歩・池田向希が20キロ初V ラスト1キロ執念のロングスパートで五輪決めた
「競歩・全日本能美大会」(15日、石川県能美市)
東京五輪の代表最終選考会を兼ねて男女20キロを行い、男子は19年のドーハ世界選手権6位入賞の池田向希(21)=東洋大=が1時間18分22秒で初優勝し、東京五輪代表に決定した。2位に入った高橋英輝(27)=富士通=は代表入りを確実にし、50キロで東京五輪代表に決まっている鈴木雄介(32)=富士通=は3位。女子は藤井菜々子(20)=エディオン=が1時間33分20秒で初優勝し、東京五輪代表に決定した。
霊峰白山から吹き下ろす風に乗った。残り1キロ。背後にピタリとついていたライバルを蹴落とすロングスパートが、東京への合図だった。鉄紺のユニホームをたなびかせ、寒空に突き上げたガッツポーズ。東洋大学3年生、池田が五輪への扉をこじ開けた。
「泣いても笑ってもこれが最後の選考レース。悔いの残らないレースをしようと思った。最後の1キロは出し切った。攻める気持ちだった」
鈴木に引っ張られるように、スタート後から集団の前方につけた。7人、5人、4人と減り、16キロで仕掛けた。優勝争いは高橋と2人に絞られ、勝った方が五輪代表に決まる展開。常に先頭に立ち、後ろから浴び続けた重圧から解き放たれ「ある意味、恐怖を感じていた」と振り返った。
19年10月の全日本高畠大会の50キロで東京五輪代表を決めた川野将虎とは寮で同部屋。前日も「頑張れよ」とメッセージが届いた。「励まし合い、高め合い、心強く頼もしい存在。また東京に向けてやっていけたら」。50キロとのダブル代表を達成。20キロに限れば12年ロンドン大会の西塔拓己、16年リオデジャネイロ大会の松永大介に続き、東洋大として3大会連続となる五輪代表の系譜をつないだ。
浜松日体高3年時のインターハイ予選で足裏のマメがつぶれ、靴を血だらけにしながら翌日の決勝も歩いた根性の持ち主。浜松市の実家の部屋に飾ってある血まみれのシューズは宝物だ。東洋大にはマネジャー兼務で入部。酒井俊幸監督と妻瑞穂コーチの指導を仰ぎながら、スピードの上げ下げにも対応できる力を強化し、昨年の世界選手権では6位入賞にこぎつけるまでに成長した。
感染が拡大する新型コロナウイルスの影響も受けている。東洋大は合宿もままならないが、酒井監督は「発想の転換で、真摯(しんし)に競技に打ち込める時間が増える。自分を見つめ直す、いい時間になる」と部員に伝えていた。その教えを池田が五輪代表という結果に結びつけた。
「(20キロ代表の)山西(利和)さんとの差もある。五輪を迎えるまでに金が目標と言えるように頑張る」。鉄紺魂を受け継ぐ21歳。東京五輪でも、その1秒を削り出す。