【記者の目】IOC、組織委、日本政府を動かしたアスリートの声
安倍晋三首相は24日夜、国際オリンピック委員会(IOC)のトマス・バッハ会長と電話で会談し、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受け、7月24日開幕の通常開催が不透明になっていた東京五輪について1年程度延期することで一致した。遅くとも2021年夏までに開催することで合意した。
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急転直下の決定を導いたのは、やはりアスリートの声だった。通常開催へと突き進んでいたIOC、組織委、日本政府。IOC委員や組織委理事からの延期論、11日の段階でWHOからパンデミック(世界的大流行)が宣言されても強硬的な姿勢は変わらなかった。
“顔色”が変わり始めたのは、急速に感染が拡大し始めた欧米のアスリートたちの延期論が報じられ始めた16日前後からだ。
サッカーやバスケットボールなどでアスリートの感染が報告され、また、五輪出場権の懸かる大会が次々と中止、延期となり、ついには練習場が閉鎖され、渡航制限や外出規制でトレーニングを積めない選手が出てきた。悲鳴にも似た叫びは各国の競技団体、NOC、IFからの延期要請へと波及した。それに伴い、バッハ会長は発言を徐々に後退させていき、組織委、日本政府も退かざるを得なくなった。
現状で新型コロナウイルスの終息の時期は見通せない。1年後も選手達にとって平等な舞台が整うとは限らない。ただ、様々な要素が絡み合う中で、ベターな選択だったと思う。(デイリースポーツ・大上謙吾)