東京五輪延期 米メディアがIOCに批判と提言「私腹を肥やすことに執着し…」
東京五輪延期の発表を受けて、米スポーツ専門有線局ESPN(電子版)が「2020年五輪は正式に延期になったが、多くの疑問が残っている」との見出しで長文記事を掲載。同局の五輪担当記者4人が(1)なぜIOCは今、2020年五輪の延期を決めたのか?(2)今回の決定で最も影響を受ける選手は?(3)すでに2020年五輪の出場が決まっている選手たちはどうなるのか?(4)延期による財政的影響は?(5)今回の決定による五輪が受ける長期的影響は?と5つの論点を挙げ、厳しい意見を交えながら見解を述べた。
(1)ではフォード記者が「まず選手からの圧力があり、各スポーツの連盟や各国のオリンピック委員会がそれに続いた。これはガバナンスやアンチドーピング、五輪期間中の選手たちのコマーシャルやブランドの活動制限に関して、選手たちの声が大きくなっている傾向を映し出している。多額の金がかつての“アマチュア企業”に流れ、IOCは私腹を肥やすことに執着し、正しい判断ができず、孤立したままの中、今回のようにトップからの常識やリーダーシップではなく、下からうねりが起こっている事実は長年、五輪スポーツを取材してきた者にとっては驚きではない」と厳しい目で分析した。
(2)についてはドレイズ記者が、陸上女子短距離の金メダリストで34歳のアリソン・フェリックスや米国水泳史上最高齢(8月で36歳の)ライアン・ロクテらの名を上げ「彼らはもう1年頑張れるだろうか?」と疑問符。ローニック記者は逆に若年層が主力となる体操を例に挙げ、「来年12月までに16歳になる選手たちは出場枠争いに参加できるのだろうか?」と別の角度から問題点を指摘した。
(4)に関してはコーエン記者が「財政的影響は非常に大きい。日本はここまで推定で120億ドル(約1兆3320億円)や250億ドル(約2兆7750億円)を費やしているが、先行き不透明な部分が多くあり、さらに数千億円単位の金を失おうとしている」、「2021年の開催は小さな希望の光ではあるが、ここから立て直すのは間違いなく厳しい」とした。
(5)ではフォード記者が「五輪はスケールダウンさせ、より合理的に環境面や経済面をおいて選手たちを統制できるようにする必要がある」と指摘。ドレイズ記者は「スポーツを通じて世界を一つにすることが五輪の真の目的というのであれば、それがIOCにとって前に進むために下した決断の背後にある偽りのない原動力になるべきであり、財布を満たし、世界中の統率者の政治的資本を増やするための道具になってはならない。そこに関しては私は懐疑的ではありますが、今回の決定によってIOCが謙虚になり、究極の目的に再び向き合うきっかけになることを願っています」と発言した。