陸上400M木村和史、香川から五輪の道切り開く「証明しないと後ろが続けない」

 陸上男子400メートルの木村和史(27)=四電工、宇多津町出身=は、地元香川を拠点に、東京五輪出場を目指している。都市部に比べ、環境面などが“ハンディ”にならないことを証明し、香川から五輪への道を切り開く覚悟だ。新型コロナウイルスの影響で1年間延期されたことを受け、世界陸連は4月6日から11月30日までは東京五輪の参加標準記録の対象期間に含まないことを発表している。

 地元・香川を拠点とする利点を聞かれた木村は「デメリットが圧倒的に多いです。9対1でデメリットですね」と、きっぱり言った。練習環境、ライバルの不在、数え上げれば切りがない。「1人の練習なので指標がタイムしかなく、今の自分の立ち位置がわからない。情報も遅い。公式よりも選手のグループLINEが早かったりします」。しかしそれ以上に大事にしたい思いがある。

 「香川から短距離でオリンピックに行った人がいなかったので、第1号になりたい。東京や大阪にいるよりも、やり遂げたときの達成感を感じられると思ったんです」

 現在は職員として働く、丸亀市の「Pikaraスタジアム」がメーンの練習拠点。走っていれば「頑張って」と声をかけられる。17年の世界選手権(ロンドン)で1600メートルリレーの代表に選出された時には、最も大きな反響があった。「あのときに『次はオリンピックだね』と言われて、これ以上のことを自分も周りも味わえるんだ」と、地元から東京へ、その思いは大きく膨らんだ。競技外でのストレスがほとんどないのも理由の一つだ。

 大学卒業後は実家の農業を継ぐつもりだったが、最後の日本インカレ400メートルで3位に入り、周囲から「もったいないよ」と言われ迷った。昨年亡くなった祖父・幸雄さんの「陸上をやりたい気持ちが少しでも残っているならやりなさい」という言葉で走り続けることを決めた。

 陸上を始めたのも過去に丸亀ハーフマラソンで5回優勝したという幸雄さんの影響。当時実業団で陸上を続けられなかった祖父の夢も引き継ぎ、ここまで来た。

 男子400メートルの参加標準記録は44秒90。木村の自己ベストは45秒53。0秒63、距離にして約8メートルを縮めれば夢へ大きく近づく。スタートが苦手で後半型だと自覚していたが、前半200メートルのタイムが日本トップクラスという事実も知った。

 「ふさわしい考えではないかもしれませんが、勝負したい、というより、出場したい。香川からでも出場できることを証明しないと後ろが続けない」

 香川からでもオリンピックにいける。自分にしか証明できない難題だ。来年の7月には28歳だが「ぎりぎり間に合うと思います」と、肉体的に不安はない。残された1年で、自分のスタイルを見つけだし、磨き上げる。

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