五輪延期で“厚底戦争”延長戦へ 陸上長距離シューズ開発ナイキ1強は白紙に

 ナイキの厚底最新モデルを履いて日本記録を更新した大迫傑
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 新型コロナウイルスの感染拡大で1年間の延期が決まった東京五輪。これにより1強状態となっていた陸上長距離のシューズ開発競争は、し烈な“延長戦”へと突入した。

 国内外大半の選手が着用し、先行してきたのは米ナイキ社の厚底靴「ヴェイパーフライ(VF)」シリーズ。1月の箱根駅伝では8割を超える選手が着用。マラソン日本代表6人のうち5人が使用し、3月には最新モデルを履いた大迫傑(28)=ナイキ=が日本記録を更新するなど、今夏に開催されていれば、独壇場の様相だった。

 ただ、1年の猶予を得たことで他メーカーの巻き返しは必至。英タイムズ紙も「東京五輪遅延により、ナイキのライバルが独自の『VF』を開発できるようになる」と、ナイキの優位性が消える可能性を報じている。

 日本のメーカーはどこまで差を縮められるか。1月の箱根駅伝でナイキ以外で唯一区間記録を更新した10区の嶋津雄大(創価大)が履いていたのは、ミズノ社の新モデルの「プロトタイプ(試作品)」だった。これ以上ナイキに水をあけられまいと、予定を半年ほども前倒しして実戦投入したものだった。

 独自開発した素材のプレートを靴底に使用し、高い反発力を生む構造。今夏発売予定は白紙となったが、ミズノの担当者は「ポジティブに捉えれば、新しいものをつくる時間が増えた」と、前向きにとらえている。

 アシックス社は3月末に厚底靴「メタレーサー」を発表。ナイキ同様、同社として初めて炭素繊維のプレートを内蔵した。担当者は「当然これで(開発)完了とは思っていない。さらに研究を続けていく」と改良へ意欲を示す。

 16年リオ五輪以降、ナイキの厚底シューズを履いた選手の好記録が続出。世界陸連は今年1月に底の厚さ4センチ以下、プレートは1枚まで、大会前に4カ月以上市販されていること、などの新規制を発表した。7月に向けて対応を急いでいた各メーカーだったが、延期により腰を据えて開発に臨めることになる。

 女子マラソン代表の鈴木亜由子が所属する日本郵政グループとともに、厚底の効果を検証してきた日本女子大の小川哲也講師は「適応に時間を要さず、履いてすぐに効果が出る。逆に、なぜ今まで薄いシューズで走っていたのかというくらい」と革新的な効果を認める。「風穴をあけたのは、やはり素材のすごさ。さらに薄く反発する素材が出てきたらどうなるか」と、技術の進化に注目している。

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