サーフ界のニューヒロイン・都筑有夢路、夢はワールドタイトル 五輪延期で「安心」

 東京五輪新種目のサーフィンで、昨年急成長を遂げたのが女子の都筑有夢路(つづき・あむろ=19)だ。世界最高峰のチャンピオンシップツアー(CT)の参戦権を争う予選シリーズ(QS)の最高ランク大会で初優勝すると、日本女子初のCTフル参戦を決めた。新型コロナウイルスの影響で試合の延期が相次ぐ中、テレビ会議アプリ「Zoom」で単独インタビューに応じ、現在の思いを語った。

 都筑にとって、2019年は飛躍の年だった。9月にスペインで行われたQS最高ランク大会、アバンカ・ガリシア・クラシックプロを制すと、QSランクは48位から8位に急上昇。注目が集まる中、11月には18歳以下の世界一を決めるワールド・ジュニア・チャンピオンシップで日本人初優勝を遂げた。

 サーフィン界のニューヒロインは「(9月に)優勝したことは今でも信じられなくて、夢見てたかなって。実感がないです」と爽やかに振り返る。

 幼少期から風呂おけに乗って湯船に浮かぶほど運動神経が良かった。小学5年で兄・百斗の影響でサーフィンを始めると、みるみる成長。神奈川県藤沢市を拠点としていたが、質の高い波を求めて中学3年の時に千葉県一宮町に家を借り、兄と共に本格的に腕を磨いた。

 そんな都筑の才能を引き出したのは、サーフボードだ。昨年7月頃、新たな可能性を求め、当時持っていた板を全て新調。これが体に合い、たった2カ月で世界大会の表彰台の真ん中に立った。

 3年前から師事するフィジカルトレーナーと、都筑の使用するサーフボード「ザナドゥ」の担当者と共に新しい板の基礎も学んだ。「『この板はこういう波でこういう乗り方をするんだよ』っていうふうに教えてくれて。板の特徴と、特徴に合わせた波でどの板をチョイスするのかを相談に乗ってくれた。それがあったおかげで、試合でも『今日の波はこの板だ』って自分で決められるようになった」。恩人たちの言葉が勝利につながった。

 波に乗った2019年シーズンはQSランクを日本女子初のCT昇格まであと1ランクまで迫る、8位で終えた。来季に気持ちを切り替えていたが、シード権を持つ米国選手が東京五輪専念のため、2020年のCT参戦を辞退。繰り上がりでCT選手になることが決まった。

 昨年末にCT参戦が決まってからは3月の開幕戦に向け、入念に準備した。20本ほどあったボードをさらに15本ほど増やし、先に開幕したQSの大会を転戦するなど多忙な日々を過ごした。だが程なく、新型コロナウイルスの感染拡大の猛威にサーフィン界も襲われた。試合の延期が相次ぎ、遠征で訪れたオーストラリアでは自主隔離が始まった。急変した環境に帰国をせざるをえなかった。

 「当時はニュースもあんまり見てなくて、『どういうことなの?』ってただ混乱してた。『試合がなくなったらどこに合わせた練習をすればいいんだろう』とか、『どうすればいいんだろう』っていうのが1番大きかった」と、CTデビューを控えた中での事態に不安も大きかった。

 不透明な現状に「CTに合った(海外の大きい)波で練習したいってすごい思うけど、なかなかできない。それがすごく悔しい」と複雑な思いがある。それでも「ほとんどおうちでトレーニングしてて、ストレッチとか、そういうことに時間を使ってます」と切り替えてもいる。

 金メダルを目標に掲げた東京五輪も1年延期となった。世界中が不安にさらされる中での決定に「ちょっと安心しました。安全な環境で練習したほうがいいって思ってたので」と胸をなで下ろした。

 金メダルに向け、思いは切らさない。「期間があくけど、(五輪で)金メダルが取れるように今やるべきことをやらなきゃいけないなって。練習とか、体のメンテナンスとか、そういうことに時間をかけられるようになったので、よりよいパフォーマンスができる」と前を向く。

 さらに大きな夢は、CTで年間1位となり、ワールドタイトルを手にすることだ。「目標がワールドタイトルなら、オリンピックで金メダルを取ることもできると思う。頑張らなきゃいけない量とか努力しなきゃいけない量は変わらないって思うので。私の場合はワールドタイトルを取るって目標のほうが強く頑張れる」。中学3年から本気で考え出した、1番の夢なのだという。

 成功する姿は普段から思い描く。「海に入ってるときにすごい考えます。すごくいいライディングができたときに、『これでワールドタイトルだー!』とか(笑)。あとはすごい自分にとって勇気がいる技に挑戦するとき、『ここでしっかり成功できたらワールドタイトル取れる!』とか」。思いを実現させるためにも、今は地道にトレーニングを積み重ねる。

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