リオ銀リレー侍・飯塚翔太「ポジティブに」 コロナ禍でもリレー金へ「ぶれずにやる」
新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が一部解除となる中、東京五輪を目指すアスリートたちの自粛生活は依然続く。ただ、先行き不透明な状況下でも、前を向き、少しでもスポーツの力で世の中を明るくしようと積極的にSNSなどで発信している選手は多い。リオデジャネイロ五輪男子400メートルリレー銀メダリストの飯塚翔太(28)=ミズノ=もその一人。常に前向きな発言が印象的な日本男子短距離界のリーダーが16日までにデイリースポーツのオンラインインタビューに応じ、現在の思いや取り組みについて語った。
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-緊急事態宣言が出て、練習拠点の味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)が閉鎖された。今の過ごし方は。
「今、僕らにできることは、まず家にいるということ。部屋で練習して、外に出たとしても、家の周りを歩いたり、ジョギング。あとはご飯を食べて、という感じですね」
-筋力が落ちたりは?
「どうしてもそうなりますね。家では重量を持てないので。家に練習グッズを置いてないんですよ。自体重でやっています。腹筋、腕立て、スクワット。でも十分筋肉痛がくるんで(笑)」
-これだけ競技から離れたのは初めてか。
「初めてですね。けがをした時でも、外で練習はできるので。トラックから1カ月離れたのは初めてです」
-選手たちに不安は。
「NTCが使えなくなってから、何人かの選手とやりとりしました。やっぱり“練習どうする?”とか“休む?”とか。あとは、もし秋にシーズンが始まるとしたら、いつも休む時期にシーズンがくることになるので、どうしようかと。ただ、みんな気持ちは前向きになっている感じはします」
-家にいる中で、取り組んでいることは。
「インプットの時間に充ててます。自分の走り(の映像)を見る時間が増えた。次はこうしてみたいなとか、こういう練習ができている時はいい走りができているとか。改めて発見がありますね。あとはオンラインで色んな分野の方々と交流してます。セミナー系ですね。経営者の方や、美容業界の方、作家さんや医者の方。こういうことをしたいなら、こうした方がいいよとか、アドバイスをもらってます。僕もトレーニングのアドバイスをさせてもらったり。知らないことを学べるので刺激になります」
-読書もしている?
「してますね。自己啓発系が多い。再現性、自分に取り込めるようなものを読んでいます。今はこれです(アダム・グラント著 『GIVE&TAKE「与える人」こそ成功する時代』)」
-いつもポジティブだ。
「前向きにやろうということは意識してます。毎日しっかり体を動かして、色んな人と話して、ポジティブに。試合で走りたい気持ちを高めてます」
-SNSでの発信も積極的だ。
「走ることはできないけど、なにかできないかなと」
-女子100メートル障害日本記録保持者の寺田明日香らと始めた、それぞれの選手が部屋での練習法や、取り組みをツイッターに投稿する『いまスポーツにできることリレー』は、ジュニア世代にも広がり、合計の再生回数は100万回を超えている。飯塚は“足が速くなる足の親指ストレッチ”を披露した。
「うれしいですね。何かやりたいと思っていた選手も多いと思うし、きっかけになれればと思っていた。色んな世代に回っていっているのはうれしい」
-家の中の移動で『大股で一歩進んで、小股で二歩下がる』というルールも導入した、と投稿していたが。
「やりました。でも刺激が足りなくて、5歩にしたら、トイレに全然たどり着かなかった(笑)。あとは目隠しして移動するとかやりました。家にいる中でも楽しんでやろうと」
-山県亮太、桐生祥秀、ケンブリッジ飛鳥のリオ五輪銀メダルメンバー4人による“リモートバトンリレー”も反響は大きかった。
「4人で話し合って、どう?って。たまたまゴールデンウイーク前に休みが合ったので。ちょうどリオの時に使ったのが、グリーンのバトンだったし、みどりの日がいいかなと。緊急事態宣言が延長になって、医療従事者の方々や頑張っている人たちに少しでもエネルギーを、と思ってやりました」
-息を合わせるのが難しそうだったが。
「2時間ぐらいですかね。リモートだから、それぞれバトンを持っているんですけど、どうしても(走ってない人の)バトンが見えちゃったり、あとは声のタイムラグがあって合わせるのが難しかった。ただ、4回目でできました」
-さすがのチームワーク。
「よかったです(笑)」
-中学生、高校生たちも全中、高校総体といった大きな大会が中止になった。
「言葉を掛けるのは難しい。やっぱり中学、高校の時に仲間たちと一緒に戦うっていうのは特別な時間です。僕も大して勉強はしなかったですけど、やっぱり部活が学校に行く意味だったし、それぐらいそういう大会に懸けていた。でも、目標に向かって頑張ってきた、チャレンジしてきたことは、絶対に今後に生かされる。自信を持って欲しい」
-来年に延期された五輪もまだ不透明な状況。現在、スポーツを取り巻く環境は厳しいが、今の思いは。
「世界的にこれだけの状況になっているので仕方がない。みんなが安心して元気でいられる状況にならないと。五輪は改めて平和の祭典なんだと、すごく感じています。ただ、僕としては、たとえいつになっても、それに向けて準備するだけ。個人種目の決勝、リレーでの金メダル。その目標はぶれずにやっていきたいと思います」