空手・清水希容、羽生流で金!五輪延期も「変わらない」“マイ道場”で基本と向き合う

 空手の女子形で東京五輪日本代表候補に内定している清水希容
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 空手の女子形で東京五輪日本代表候補に内定している清水希容(26)=ミキハウス=が19日までに、オンラインでのインタビューに応じた。競技特性上、試合の時にマットの上に立つのは自分ただ一人だ。常に自身と向き合いながらの競技生活を送ってきた。ステイホームが続く今、多くの人の生活が変化し、自分自身と向き合う時間が増えている。そんな読者へ、清水は読書のススメを説く。自身も読書から得た金メダルへの心得を胸に、1年延期が決まった東京五輪での優勝を誓った。

 1年の延期が決まった東京五輪。清水自身も自宅練習の毎日が続いている。高校生の頃に両親が自宅に作ってくれた約4メートル×3メートルの“マイ道場”に朝から晩まで、長いと8時間。これまで目を向けられなかった基本中の基本と向き合い、鍛錬を続けている。いつも通りの明るい笑顔と丁寧な語り口調で、清水は答えてくれた。

 「1年延期になったけどやることは変わらない。逆に今まで大会続きで大会に合わせた練習になってしまっていたので、妥協して練習できなかった部分をしっかり埋めて、基盤を固める練習している」

 目指すは金メダル。2020年は強い覚悟とともに迎えていた。

 「延期自体へのショックはあまりない。もっと成長できる時間をもらえたし、今年の頭は五輪のリハーサルをできたと思っている。五輪の年を迎えた気持ちは全然違う。その年にならないと分からないことだった。次は変に気負いすぎずに、と思えている」

 このコロナ禍で、遠方に住んでいる古川哲也コーチとの“オンライン稽古”を始めた。これまでは動画を送って助言をもらっていたが、週3日約2時間。課題をもらい、個人練習の時間で直し、また指導を受ける。

 「オンラインならタイムリーに話ができる。もっと早く知ってたらよかったってちょっと思いました(笑)」。ステイホームの思わぬ収穫だった。

 次の試合は未定。ぶっつけ五輪も覚悟しているという。

 「今は自分の弱さと向き合っています。目を背けたくもなるけれど、こういう期間じゃないとできない。それによってどう自分を成長させられるか。少しでも積み重ねていけば、きっともっと成長した自分になれる」

 稽古中、負けた試合がフラッシュバックする。そんな時こそ、自身と向き合うべき瞬間だ。「考えれば考えるほど悔しくなる。だからもっと練習してもっと強くなろうと思う」。自身の心と常に会話をしながらの競技生活。それは「自分と向き合う、イコール、人に伝えるだと思っている」からだという。

 そんな清水がすすめるのは読書だ。昔は「文字がいっぱいで苦手」だったが、今では自身のSNSにおすすめの本を紹介するほどになった。

 「こういう考え方もいいな、試してみたいなという、ポジティブな気持ちを増やせる」

 大切にしているのは自分自身に還元すること。自分と向き合うための引き出しを増やすこととも言えるだろう。だから読み方は独特だ。「読み切ることもあるけれど、それよりも気になるところに目を通す。ここ読みたいと思ったところを繰り返し読むんです」

 おすすめの中には、フィギュアスケート男子の羽生結弦(ANA)のコーチを務めるブライアン・オーサー氏の「チーム・ブライアン 新たな旅」も入っている。右足首の負傷に苦しみながら平昌五輪へと向かう羽生と、結果的に銅メダルを獲得したフェルナンデス(スペイン)はともに同氏の門下生。両者を指導する葛藤や五輪への道のり、師弟を超えた絆がコーチの視点から描かれている。

 「試合への計画は選手によって違うけど、声のかけ方もコーチはすごく考えているんだなって。選手は自分のことしか考えていないけれど、コーチはいろんな選手に目を向けないといけない。その中で合った言葉を選択して声を掛けるのは、器も大きくなければできないこと。勉強になるな、今後の自分にも(生かそう)って思いながら読みました」

 コーチ目線から「選手はどう考えているか」を想像しながら読み進めた。金メダルへの過酷で孤独な道のり。ページをめくるたびに思いが重なる部分も少なくなかったという。特に、羽生がスペイン人選手と競い合う姿は「すごく自分とリンクした」と振り返る。

 清水が東京五輪で金メダルを争うライバルと目されるのは、18年世界選手権女王のサンドラ・サンチェス。彼女もスペインの選手で数々の死闘を繰り広げてきたからだった。

 清水にとって羽生は表現者としても、アスリートとしても憧れの存在。本を読み、その強さを再認識した。

 「羽生選手は相手を尊敬し、相手をたたえた上で試合に持って行ける。それが彼の強さなんだな、すごいなと思いながら読んだ。もちろん自分も(相手へのリスペクトは)思っているけれど、より大切にしないといけないなと思い直したのが印象に残っている」

 だからこそ思う。

 「ただ勝ったらいいではなく、憧れられる、人間味のある選手になりたい。五輪では感謝や思いを伝えられる演武で優勝したい」

 五輪新種目の空手において“金ロード”を知る者はいない。読書で学んだ心得は、きっとその道しるべになる。

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