池江璃花子が涙「1年後の今日、この場所で希望の炎が輝いていてほしい」
1年延期が決まった東京五輪開幕まで、23日で1年前を迎えた。メインスタジアムとなる国立競技場では「一年後へ。一歩進む。~+1(プラスワン)メッセージ~ TOKYO2020」と題したプログラムが開催され、競泳女子で白血病からの復活を目指す池江璃花子(20)=ルネサンス=が出演。聖火を手に取り、一人のアスリートとして、動画とともに世界へメッセージを発信した。
小さく、しかし力強くランタンの中でともり続ける聖火を、池江はそっと両手に抱いた。雨上がりの国立競技場。本来であれば24日、6万人が集い、開会式が行われるはずだった場所だ。1年後、開会式が行われる舞台でもある。静寂のスタジアムを励ますかのように青々と輝く芝生の真ん中で、池江はスッと背筋を伸ばして立った。アスリートとして、そして池江璃花子という人間として。飾らないまっすぐな言葉で、池江は世界に向かって言葉を発した。
「私も、この大会に出るのが夢でした。オリンピックやパラリンピックはアスリートにとって特別なものです。その大きな目標が目の前から突然消えてしまったことは、アスリートたちにとって、言葉にできないほどの喪失感だったと思います。私も、白血病という大きな病気をしたから、よく分かります」
16歳でリオ五輪を経験。100メートルバタフライでは5位入賞を果たした。東京五輪期待の星。しかし、病で状況は一変した。
「思っていた未来が、一夜にして、別世界のように変わる。それは、とてもきつい経験でした」
想像を絶するようなつらい闘病生活を経験した。死にたいと思う瞬間もあった。それでも多くの医療従事者に支えられながら、「負けたくない」と言い続け、池江は帰ってきた。だからこそ言う。
「世の中がこんな大変な時期に、スポーツの話をすること自体、否定的な声があることもよく分かります。ただ一方で思うのは、逆境からはい上がっていく時には、どうしても、希望の力が必要だということです。希望が、遠くに輝いているからこそ、どんなにつらくても、前を向いて頑張れる」
その光こそ、池江にとってはプールに戻ることであり、心から愛する『スポーツ』そのものだったのだ。
「世界中のアスリートと、そのアスリートから勇気をもらっている全ての人のために。1年後の今日、この場所で希望の炎が輝いていてほしいと思います」
芝生を離れ、大役を務め上げると、思わず感極まった。両手で涙をぬぐう。こみ上げてくる感情を、抑えることができなかった。
1年後の未来へ届け。優しくともる聖火が、この場所でたけだけしく燃え上がりますように。スポーツが愛され、応援されますように。
そしてきっと世界中が願うだろう。夢に破れ、それでも再び五輪という夢を胸に抱き歩む一人の競泳選手の願いが届きますように、と。