大坂なおみ、抗議の棄権「私はアスリートである前に黒人」4強進出も黒人銃撃事件受け
「女子テニス・ウエスタン・アンド・サザン・オープン」(26日、ニューヨーク)
黒人男性が警官に背後から銃撃された事件に関し、米国スポーツ界で抗議行動が一気に広がった。世界ランキング10位の第4シード、大坂なおみ(22)=日清食品=は女子シングルス準々決勝で20位のアネット・コンタベイト(エストニア)に逆転勝ちして4強入り。ただ、試合後にツイッターで「私はアスリートである前に黒人女性である」と抗議に賛同する声明を発表し、その後マネジメント会社が22位のエリーズ・メルテンス(ベルギー)と顔を合わせる予定だった準決勝を棄権すると明らかにした。
大坂が人種差別への抗議を行動で示した。「私はアスリートである前に黒人女性。私のテニスを見るより、もっと注意を向ける多くの重要なことがある」と自身のツイッターに投稿し、準決勝の棄権を決断した。
米ウィスコンシン州ケノーシャで23日、黒人男性が警官に背後から銃撃された。「私がプレーしないことで劇的な変化が起きるとは思わないが、白人が多数を占めるスポーツの中で会話を始めることができれば、正しい方向へ踏み出せると思う」と説明。「相次ぐ警官による黒人の虐殺を見ることは正直、吐き気がする。何度も同じことを言うのは疲れる。いつになれば、もう十分になるの」と率直な思いをつづった。
ツアー中断期間には米ミネソタ州で起きた白人警官による黒人男性暴行死事件に対する抗議デモにも参加。「成長してシャイじゃない自分になりたかった」と話し、SNSでは「沈黙は決して答えではない」と積極的な発信をつづけていた。
試合でも成長の跡を示した。劣勢をはね返した内容には3回戦までに見られなかった力強さがあった。「序盤は自分の姿勢が前向きじゃなかった。拳を握ったり、カモンと叫んだりして(精神面の)バランスを取るようにした」。第2セットも先にブレークを許したが「負けるとしても自分にがっかりしたまま終わりたくない」と気持ちを切り替え、ここから9ゲームを連取して主導権を握った。
19年12月から指導するフィセッテ・コーチは「ツアーが中断してコートに立たなかったことで、いかにテニスをすることが好きかを理解したんだと思う」と精神面の成長を指摘。大坂も「以前だったら1セットを失ってブレークされた状況から逆転できたか分からない」と打ち明けた。
全米オープンの前哨戦で4強入り。中断後初めて臨んだ大会で3試合を戦い、全米への手応えはつかんだ。