池江璃花子が涙「第2の水泳人生の始まり」594日ぶり復帰、インカレ出場へ目標達成

 26秒32でこの組1位の池江璃花子はレース後、感極まる(代表撮影)
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 「競泳・東京都特別水泳大会」(29日、東京辰巳国際水泳場)

 帰ってきた。白血病からの復帰を目指す競泳女子の池江璃花子(20)=ルネサンス=が50メートル自由形で、19年1月13日の三菱養和スプリント以来、594日ぶりにレースに出場し、26秒32をマークした。約1年7カ月ぶりの実戦ながら、組1着の全体5位。自身の日本記録24秒21には届かなかったが、目標に掲げる10月の日本学生選手権(インカレ)の個人種目出場へ、派遣標準記録26秒86を突破した。

 奇跡の復活と人は言うだろう。しかし、この歩みこそ、池江の人生。長かった闘病生活を乗り越え、勝負師として、池江がプールに帰ってきた。

 「タイムや順位は関係なく、自分が泳いでいること、今またこの場所で泳げたことにすごく、自分のことだけど感動した。また戻ってこられたんだなって実感した」

 スタート台の前に立ち、きらきらと輝くプールを見つめた。緊張感でいっぱいだった。入念にゴーグルの着用感を確認。久しぶりに味わうスタート前の静寂や胸の高ぶりが新鮮だった。スタートでわずかに出遅れるも、浮き上がりから伸びのある泳ぎでスッと前へ。組1着の26秒32。目標だった26秒86切りも達成した。実戦から1年7カ月遠ざかっても、水を駆ける池江はやはり生き生きしていた。

 会場は無観客だったが、ゴール後は関係者から温かい拍手が送られた。涙ぐむマネジャーの姿を見ると、思わず池江も涙した。

 大きな大きな一歩に「楽しかったのももちろんだけど、1本終えてすごくホッとした」。記念すべき再出発の瞬間を「第2の水泳人生の始まりかな」と表現した。

 レースプランは意識せず、あくまでも「楽しんで泳ぐことが自分の中で1番だった」と言うが、アスリートとしての本能を再確認した瞬間もあった。

 残り15メートル。ちらっと横を見ると、追いかけてくるライバルの姿が目に入った。体は「疲れて動かなくなっている」状態だったが「ここは負けたくないと思って、最後まで出し切った」。闘争心に火がついた。「アスリートとしての負けたくない気持ちがしっかり残っていた」と池江。闘病中、何度も「負けたくない」と言い聞かせてきたが、レースであらためて、自分は競技者だと実感できた。それがうれしかった。

 とはいえ「体力面はまだまだ。体つきも全然追いついていない。これから体力の強化をしっかり詰めていきたい」と話す。あくまでもまだ、ここはスタート地点だ。

 「1番の目標はパリ(五輪)に出場すること。徐々にタイムを出して、パリへ向けて体を戻していければ」。池江にしか紡げない物語が、ここから始まる。

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