大坂なおみ 語っていた抗議活動への覚悟「スポンサー失う怖さ」も突き動かす使命感
テニスの四大大会、全米オープンの女子シングルス決勝が日本時間13日早朝、米ニューヨークのビリー・ジーン・キング・ナショナル・テニスセンターで行われる。2年ぶりの全米制覇、3度目のグランドスラム優勝を狙う世界ランク9位の大坂なおみ(22)=日清食品=は、同27位のビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)と対戦する。
今大会で入場時にみにつける黒のマスクに、過去に黒人差別により亡くなった人々の名前を記し、人種差別への抗議を続けてきた大坂。用意したマスクは計7枚。決勝進出を果たしたことですべて披露できることになった。準決勝後には、マスクに名前を入れた被害者の家族から感謝の言葉も受け取り、涙した。「メッセージももらい、涙が出た。私は多くの人にこの気持ちを届けたいし、注目してもらいたい」。
スポーツの舞台での政治的な行動に、賛否の声があるのも確か。ただ、大坂は大会前の8月に米「タイム」紙での、大学バスケットボール選手、マイキー・ウィリアムスとの対談で、抗議活動を行うことへの覚悟を語っていた。
「選手は発言をする度にスポンサーを失うことを恐れています。私にとってはそれは本当にそう。スポンサーがほとんど日本なので。彼らは私が何について話しているかわからず、動揺していたかもしれない。でも何が正しいのか、何が重要なのか話さなければならない時期がくる」-。
世界的なプレーヤーとなった今、「テニスは大多数が白人のスポーツ。自分が代表者のように感じている。負けてはいけないように感じる時もある。でもそれはとても大きな誇りの源」と、使命感があることを明かしている。
◆大坂が着用した全7枚のマスク
◇1回戦
ブレオナ・テーラー
今年3月、ケンタッキー州で薬物事件捜査の警官に自宅に踏み込まれて射殺された黒人女性。事件とは無関係とみられている。
大坂のコメント「ただ、気付いてもらおうと思った。もっと関心を持ってもらうため。今大会は7枚のマスクを用意している」
◇2回戦
エリジャ・マクレーン
昨年8月、コロラド州で警官に押さえつけられ、その後に病院で亡くなった黒人男性。
大坂「彼のストーリーを読んで心を痛めた。悪く書かれたものは一つもなく、優しさにあふれた男性だった。彼の名前を表現することができ、特別な日になった」
◇3回戦
アマード・アーベリー
今年2月にジョージア州でジョギング中、白人男性にトラックで追い掛け回されて射殺された黒人男性。
大坂「あんな惨事は起こる必要がなかった。みんなに知ってもらいたい。みんなとつながっている気がする」
◇4回戦
トレイボン・マーティン
12年2月にフロリダ州で自警団員に射殺された当時17歳の黒人男性。「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命も大事だ)」運動の始まりに。
大坂「彼の死はハッキリと覚えている。当時、私は子供だった。何が起こっているか?に目を開かせてくれた。同じことが何度も繰り返されるのは悲しい。変わらないといけない」
◇準々決勝
ジョージ・フロイド
今年5月にミネソタ州で警官に首を地面に押さえつけられて死亡した黒人男性。現在における抗議運動拡大のきっかけとなった。この試合後に、これまでに着用した被害者の家族から感謝のメッセージが届き、涙。
大坂「自分がしていることに感動してもらえて、グッとくるものがあった。私は意識を広めるためのただの器でしかない。痛みを抑えることはできないけど、なんでもお手伝いできれば」
◇準決勝
フィランド・キャスティル
16年に警官に車の停止を命じられた後、取り調べ中に射殺された黒人男性。この試合の勝利で、マスクをすべて披露できることに。
大坂「できるだけ多くの名前を出そうというのが、大きなモチベーションになった。私は多くの人にこの気持ちを届けたいし、注目してもらいたい」