大坂なおみ ナオミノマスク完遂…伝えたかったことは「より疑問に思うこと」
「テニス・全米オープン」(12日、ニューヨーク)
決勝が行われ、第4シードの大坂なおみ(22)=日清食品=が元世界ランキング1位で初制覇を狙ったビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)に1-6、6-3、6-3で逆転勝ちし、2年ぶりの頂点に立った。19年の全豪オープン以来3度目の四大大会制覇。ツアーでは今季初勝利、通算6勝となった。人種差別への抗議マスクで注目を集めた2週間の戦い。試合後は差別撤廃を改めて願った。
理不尽な最期を遂げた黒人たちへの思いとともに、2年ぶりの頂点に立った。人種差別への抗議マスクで注目を集めた2週間の戦い。有終の美を飾った大坂はインタビューで「どんなメッセージを伝えたかったか?」と問われ、こう返した。
「あなたはどんなメッセージを受け取りましたか?」-
警官による射殺や暴行、白人男性による殺害と日常生活の中で突然、命を奪われた黒人被害者名が入ったマスクの着用を1回戦から始めた。決勝までの試合数と同じ7枚を用意し、約束通りに全て披露した。大会中に被害者家族から感謝のメッセージも受け取り「泣かないようにするのが大変だった。自分の行動が心に響いたのなら、私にとってもぐっとくるものがある」と後押しになった。
「伝えたかったのはより疑問に思うということ。みんなが議論を始めてくれたらいい」。父レオナルド・フランソワさんがハイチ出身、母環さんが北海道生まれ。3歳の時に米国に移住した「マイノリティー(人種的少数派)」という立場が、今の人権意識の原点だ。トランプ大統領が「ごみだめ」と例えた貧困国ハイチの歴史について父から多く話を聞き「自分にとってストーリーを広めたり、誰かの経験を聞いたりすることはとても価値があること」と語った。
スポーツの舞台での政治的な行動に、賛否の声があるのも確かだった。ただ、大会前に米「タイム」誌で、抗議活動を行うことへの覚悟を語っていた。
「選手は発言をする度にスポンサーを失うことを恐れています。私にとってもそれは本当にそう。スポンサーがほとんど日本なので。彼らは私が何について話しているかわからず、動揺したかもしれない。でも何が正しいのか、何が重要なのか話さなければならない時期がくる」-。
思いを貫き通し、世界の人々に強く、強く、訴えた。