両親が見たカヌー多田羅の精神的成長 愚痴や弱音から卒業
カヌー女子スプリントの多田羅英花(28)=愛媛県競技力向上対策本部=が、東京五輪出場まであと一歩まで迫っている。今季初レースとなった9月の日本選手権で、女子カヤックシングル500メートルを制した。出場が内定している来年3月の五輪予選を兼ねるアジア大陸予選(タイ)で優勝すれば、五輪出場枠獲得とともに五輪代表に決まる。自分に自信を持つことで“全盛期”を迎えつつある東京五輪のヒロイン候補に迫った。
多田羅の精神的な成長を、最も近くで見守ってきた父・英紀さん(51)と、母・光代さん(50)の2人も感じているという。
アジア最終予選の内定を勝ち取った前後で、普段の連絡の内容が変化した。「『全然勝てん』とか『コーチに怒られてばっかりや』とか、わりと何でも話してくれたけど、それが一切なくなった」
昔から「泣き虫」だった。大学進学で親元を離れ、長期休暇の帰省から両親の運転で下宿に戻ると、毎回のように車を追いかけてきた。「下宿から高速に乗るまでの近道を走ってきて、いつまでも手を振るんで、犬を捨てて帰るみたいで嫌やわ~って」と母は笑う。現在も長期遠征や合宿で実家を出発する際には「毎回、泣きながらいってきます、って言ってます」という。
そんなまな娘が“愚痴”や“弱音”を見せなくなった。「覚悟を決めたのか。遠い存在になったというか、少しさみしいかな」。成長をうれしいが…、複雑な親心をのぞかせた。