「偽陽性」内村航平を巡って起きた混乱 東京五輪へ突きつけられた課題
国際体操連盟(FIG)は31日、29日に新型コロナウイルス感染と発表した体操男子個人総合五輪2連覇王者の内村航平(31)=リンガーハット=について、30日に行った3つの病院でのPCR検査の結果ですべて陰性だったとし、大会医師団が29日に発表した陽性反応は「偽陽性」だったと結論付けたと発表した。内村は練習に復帰し、五輪延期後、国内で初の国際大会となる日米中露4カ国による国際交流大会(11月8日、代々木第一体育館)に向けて、再び調整に入る。30日には他の7人の日本選手も検査を受け、全員が陰性だった。
内村は当初6日間の経過観察を経て、11月4、5日に再度PCR検査を受ける予定だったが、急きょ30日に都内の病院、東京国立大学病院、大阪の公立大学病院の3カ所で再検査を受け、その結果、すべて陰性だった。
大会医師団は検査結果、臨床症状、経過を総合的に考慮し、29日の陽性反応は「偽陽性」だったと結論付け、29日に発表したPCR検査を行った都内の病院は管轄の保健所に対して、内村の陽性の届け出を取り下げた。
29日に選手によるオンライン会見を欠席した際に、日本協会は「体調不良」としていたが、今回の発表では訂正。内村の体調は「万全」で、今後は日米中露による国際交流大会に向けて調整していくという。内村と合宿していた他の日本選手も30日にPCR検査で、全員が陰性だった。
今回の4カ国による交流大会は、コロナ禍における日本で初の五輪競技の国際大会で、来夏に延期となった東京五輪に向けて、大きな試金石とみられている。厳重なコロナ対策を行う中で、精度が高いとされ主に利用されるPCR検査だが、決して100%ではなく、今回の混乱は大きな課題を突きつけられた形となった。国際体操連盟もリリースの中で「今回は新たに『偽陽性』という課題への対応に直面した」と、綴った。
1万人を超える選手が参加する五輪本大会。検査回数を増やせば、一定数の偽陽性が出る可能性がある。今回のように試合までの猶予があれば、再検査を行えるが、大会直前であれば出場可否の判断は難しくなる。今回、NTCの体操場の利用が中止となったように、大会前に一時的に練習ができなくなるという問題もある。また検査数を増やせば、医療体制への負担やコスト増にも繋がる。
大会まであと約10日。11月4、5日には各国の選手も来日し、そこからは毎日PCR検査が実施される。予断を許さない状況は続く。