柔道“不可解裁定”で大混乱…審判長がミスを陳謝「残念なこと重なった」生中継で失態

 男子60キロ級決勝で小西誠志郎(右)が米村克麻(下)を抑え込んだ状態での試合再開を指示する主審(代表撮影)
 講道館杯柔道の男子60キロ級決勝で敗れ、涙ぐむ小西誠志郎(代表撮影)
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 「柔道・講道館杯」(31日、千葉ポートアリーナ)

 日本一を争う大会で、審判の不明瞭なジャッジを巡って大混乱が生じた。男子60キロ級決勝で、米村克麻(24)=センコー=と小西誠志郎(21)=国士舘大=が対戦。「技あり」を奪われてリードされていた小西が相手を押さえ込み、逆転するかと思われたが、不可解に止められた。中断、協議を経たもののポイントは変わらず、そのまま小西の敗戦となった。

 試合時間1分30秒頃、小西が袈裟固めで押さえ込みに入った時に問題が発生した。試合の電光表示板では、なぜか押さえ込まれていている米村が押さえ込んでいることになっており、10秒経過(=技あり)時点でブザーが鳴って米村の「合わせ技一本」による勝利となった。

 しかし、実際には押さえ込んでいた小西側の抗議で試合は約5分中断。審判が協議した結果「一本」は取り消されたものの、小西の側に本来なら10秒押さえ込んだ時点で入るはずの「技あり」ポイントが入らないまま、もう一度押さえ込みの状態に戻して再開。しかし、ポイントを逃してしまい、そのまま小西が敗れた。

 小西の押さえ込みに対して「解けた」の宣告はなかっただけに、誤ったブザーと同時に止められなければ、20秒経過(=一本)で逆転勝利し、優勝していた可能性もあった。主審が米村の勝利を宣告すると、会場には大きなどよめきが発生。小西のセコンドについていた国士舘大・吉永監督が試合後もしばらく猛抗議するなど騒然となった。

 試合後に取材に応じた大迫明伸審判委員長の説明によれば、今回の裁定は次のような理由で判断したという。

 ・電光表示板のスイッチを押す担当者が、押さえ込んでいる選手を誤って逆にしてしまった。

 ・押さえ込みが約8秒経過した際、押さえ込まれている米村の足が小西の足に絡んでおり「解けた」と判断すべきところを宣告せず、10秒が経過。その時、押さえ込む側が逆になったままの電光表示板のブザーが鳴ってしまい、主審が「一本」と勘違いして試合を止めてしまった。

 ・審判団で映像を見直して協議した結果、小西の押さえ込みに対して米村が約8秒で足を絡んでおり「解けた」ものとみなし、小西に「技あり」(押さえ込み10秒)のポイントは与えない。

 ・ただ、足を絡まれた際に「解けた」と宣告していれば、その体勢から小西が再度押さえ込みに入る可能性があったため、中断後はもう一度、押さえ込みが「解けた」寝技の状態から再開させた(結果的にはこれも8秒で「解けた」ためポイントは奪えず)。

 ・柔道には、大相撲などのように裁定について選手に説明するルールになっていないため、当事者にとって不明瞭な進行になってしまった。

 このように、さまざまなミスが不運にも連鎖してしまった結果、大きな混乱が生じてしまったといい、「色んな残念なことが一度に重なってこのようなことになってしまった」と大迫委員長。また、この試合はNHK-BSのサブチャンネルで生中継していただけに、「生放送で(試合進行が)長い時間停滞したことを審判委員会としても深くおわび申し上げます」と失態を陳謝した。

 今大会は新型コロナウイルスの感染拡大による中断からの主要国内大会の再開となったが、後味の悪い一幕となった。

 不可解な裁定に小西は「(審判から)何も説明がなくて、試合中ずっと不安だった」と心境を吐露しつつ、「(先に)ポイントを取られたことは事実。悔しいけど、審判に(ポイントが)ないと言われたら、ない。(負けを)受け止めて、また一からやり直したい」と涙をのんだ。一方、優勝した米村も「結果的に優勝できてうれしいが、気まずい」と複雑そうな様子だった。

 日本男子の井上康生監督は「勝った米村選手も、負けた小西選手も(不明瞭な裁定で)気持ちを落とさなきゃいけない形になった。これからはそういうことがないように、起こったことを検証して課題に取り組んで次に向かわないといけない」と再発防止を訴えた。

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