臥牙丸が引退会見「手術をしても相撲を取ることはできない…」負傷の両膝、治らず
「大相撲11月場所・11日目」(18日、両国国技館)
元小結臥牙丸(33)=本名ジュゲリ・ティムラズ、木瀬=が18日、オンライン形式で引退会見を行った。「長い間、応援してくださった日本の皆さん、ジョージアの皆さん、ありがとうございました」と15年間の力士人生を支えたファンに感謝した。
相撲協会は離れ、日本に残り、相撲に携わる仕事をする意向。「今まで相撲しか考えていない。(ジョージアでは)柔道の人生。スポーツしか考えない人生だった。いろいろ勉強して自分の相撲を生かせる人生を真面目に一生懸命頑張ります」と語った。
ジョージア出身で2005年九州場所で初土俵を踏み、10年名古屋場所で新入幕。200キロを超える巨漢で突き押しを武器に最高位は小結に昇進した。三賞は敢闘賞を2回。「ガガ」の愛称で親しまれ人気力士となった。両膝の負傷が深刻となり、去年の九州場所で途中休場し幕下に降下。その後、5場所連続で休場し、今場所は序二段まで番付を落としていた。
「去年から両膝をケガしてずっと治療してきたけど治らない。親方に相談して引退を決めた。手術をしても相撲を取ることはできないと(医者の)先生の判断だった」と、引退理由を明かした。
15年前に来日。相撲は映像でしか見て折らず、日本語も全く話せなかった。「木瀬部屋に入って、いい親方が預かってくれて幸せだった。いい時は褒められて悪い時はしかられて。感謝している。心からありがとうございます。楽しい時間だったです」と、育ててくれた師匠や仲間に感謝した。
会見に同席した師匠の木瀬親方(元幕内肥後ノ海)は「面倒見がいいから、教え方もうまい。ガガに頼っていた。木瀬部屋があるのもガガのおかげ。自分にも厳しい、人にも厳しい。木瀬部屋の基礎を作ってくれた。パワーが魅力で負ける時も豪快に負けたり、弟子だけど見ていて楽しい、憎めない力士だった。ゆっくり体を第一に、両膝を治して長生きしてほしい」とねぎらった。
臥牙丸は思い出の一番には2011年秋場所、大関把瑠都に初挑戦で勝利したことを挙げた。同場所では2日目から10連勝し、優勝争いに加わるなど、快進撃した。「稽古場でも1度も勝ったことがなくて本当に何をやっても自分の相撲が取れず、1パーセントも勝てないと思わず。そこで勝てたからすごいうれしかった」と振り返った。
2017年夏場所、横綱日馬富士から奪った唯一の金星も忘れない。「横綱は強くて勝てる気がしなかった。重さを生かせていい相撲が取れた。ファンの皆さんの応援がすごくうれしかった」と、笑みを浮かべた。
初金星は自身より祖国の母が喜んでくれたことで「自分のことよりうれしかった」と言う。「長い間、病気で苦しんで、白星を挙げて頑張っている姿が励みになると(母から)聞かされた。まだまだ頑張ろうと思ったけど18年に残念ながら亡くなった。それからも頑張ろうと思ったけど、こういう決断になった」と無念だった。
臥牙丸が礎を築き、今や木瀬部屋は全部屋の中で関取は最多の7人。弟子数も30人も佐渡ケ嶽部屋に次ぐ2番目の大所帯となった。
明るい性格でファンからも力士からも愛され、異国での力士人生に万感。パソコン画面越しに手を振り、笑顔で会見を締めた。