【瀧本誠の真っ向勝負】五輪代表決定戦は丸山が若干有利 勝負の分かれ目は「間合い」

 柔道男子66キロ級の東京五輪代表決定戦、19年世界王者の丸山城志郎(27)=ミキハウス=と、17、18年世界王者の阿部一二三(23)=パーク24=の決戦は13日に東京・講道館で行われる。日本柔道史上初となる一騎打ちのワンマッチの行方を、2000年シドニー五輪男子81キロ級金メダリストの瀧本誠氏(46)が分析。これまでの直接対決の内容などを基に、間合いの部分を含めて丸山が若干有利と予想した。

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 展開としては延長戦までいくのではないでしょうか。最初は様子見かもしれません。互いの癖とかやり方とか、全部わかった上で対戦するわけですから、一瞬の駆け引きとか気の緩みとか、見極めた方の勝ちでしょう。

 ワンマッチの想像はつきにくいのですが、一方的な展開にはならないと思います。仮にあっさり勝負がついたとしても、その中に駆け引きや、外野には見えない部分がたくさんありながらの勝負になるかもしれません。

 丸山選手は年齢的にも完成された柔道です。逆に阿部選手は、私から見れば完成されていません。勢いはすごいけど、言ってみれば不器用な柔道。なぜかと言えば背負い投げ一辺倒だからです。

 試合での決まり技には袖釣り込み腰や内股などがあるものの、背負い投げが崩れてその形になっているのです。系統で言えばみんな担ぎ技。対照的に丸山選手は内股、体落とし、背負い投げ、袖釣り込み腰、ともえ投げ…、寝技もあり多彩な技で勝っています。いろいろな技、いろいろな選手に対応できます。

 阿部選手は右組みで、相四つにはめっぽう強いと思うのですが、相手が左組みだと、やや不安が残る感じです。2人はけんか四つ。自分で攻撃したいけど、すればするほど丸山選手の間合いになるのです。柔道は間合いがすごく大事で、互いに自分の間合いがあります。間合いに入るか入らないかで勝負は決まると思いますので。

 これまでの対戦でも、丸山選手とやるときにはやや下がる感じ。出方をうかがいながら試合をしている印象です。下がったら不利になってしまいますが、自分の間合いに入れないから下がらざるを得ません。そこが勝負の分かれ目になると思っています。

 阿部選手が勝つには昨年のGS大阪のように先に攻めて、相手に指導が入って、出てきたところを返していくような形でないと現時点では厳しいかと。逆に丸山選手は先に反則を取られなければ、いろいろな形で技が出せます。若干、丸山選手が有利かと思います。

 決着がついたら、もしかしたら今後2度とやることはないかもしれません。丸山選手は選手としては一番ピークだと思います。次の五輪は出られなくはないけど、普通に考えれば厳しい年齢ではないかと。この後は、仮に対戦したとしてもおそらく阿部選手の方が強いでしょう。今回にかける思いは2人とも強いけど、丸山選手は後ろはないという気持ちでいるかもしれないですね。(00年シドニー五輪男子81キロ級金メダリスト、駒大総合教育研究部 スポーツ健康科学部門准教授)

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