高橋大輔アイスダンス初の2位 村元の負傷乗り越え表彰台「経験自体が次につながる」
「フィギュアスケート・全日本選手権」(27日、ビッグハット)
アイスダンスのフリーダンス(FD)が行われた。男子シングルから転向後、初の全日本選手権に臨んだ2010年バンクーバー五輪銅メダリストの高橋大輔(34)は、カップルを組む村元哉中(27)=ともに関大KFSC=と前日のリズムダンス(RD)2位からスタートし、FD84・03点、合計151・86点で2位。前日の村元の負傷を乗り越え、表彰台に立った。小松原美里(28)、小松原尊(29)組=倉敷FSC=が175・23点で3連覇を果たした。
デビュー戦のNHK杯より、FDの得点は9・07点下回った。22年北京五輪を目指す上で最大のハードルとなる小松原組とは、合計23・37点差。それでも、ピンチの中で2日間滑りきり、表彰台に乗った高橋は「この状況で全日本で滑る経験自体が次につながると思った」。シングルから15回目の全日本。トップ選手が勢ぞろいする特別な大会の重みは誰よりも知っている。
苦しい演技だった。前日の公式練習で、村元が左膝裏付近を痛めるアクシデントがあった。それでも何とか大きなミスなくRDを終えて2位発進。ただ、一夜明けても状態は厳しかった。
FDを控えた午前の公式練習では「思った以上に足に痛みがあった。大丈夫かなと正直不安はあった」と村元。高橋も「午前中の練習で相当痛そうだなと不安や心配があった」と明かした。村元の左足は太ももから膝にかけてテーピングが施されていた。「哉中ちゃんが何とかしますと、すごく前を向いて過ごしてくれたので僕もサポートした」と、RD同様に高橋が「頑張ろう!」と声をかけて演技に臨んだ。
ただ、同調性が何より問われるアイスダンスでは一人のハンディは両者に影響する。中盤のリフトで抱え上げた村元を降ろす際には、高橋がバランスを崩して氷に手をつき減点された。NHK杯で高橋が手をついた後半のツイズルでは「前回のことがあって緊張していた」と今度はターンが遅れてしまった。
中盤のステップを含めて3つの要素で出来栄えを示すGOEはマイナス。高橋は「気持ち的には落ち着いていた。僕自身も何が原因がわからない」とパートナーの負傷の影響は一切に口にしなかった。ただ「正直かなり悔しいけど、この悔しさを次に生かすしかない」と言った瞬間に見せた厳しい表情に、勝負師の魂ものぞかせた。
「RD、FDとも“見せる”ということでは、表現できるようになってきた。課題はほぼ全部。1つずつ着実にレベルアップしていくようにやっていくしかない」。とにかく逃げずに戦った。その事実を、必ず五輪への糧にする。