森会長、逆風の東京五輪に自信と葛藤 「今年難しいとは口が裂けても…」
東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(83)が12日、都内で行われた組織委職員への年頭あいさつと講演会に出席し、東京五輪への決意を語った。新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、緊急事態宣言の真っただ中。世論調査では今年の開催に否定的な声が8割を占めるなど、逆風が吹く中だが「私がここで考え込んだり、迷ったりすれば、すべてに影響する。あくまで進める」と強調。一方で「私の立場で今年難しいとは口が裂けても言えない」と葛藤もにじませた。
吹きすさぶ逆風は、身に染みている。午前に行われた年頭あいさつで森会長は、自嘲気味に笑いながら明かした。
「うちの家内がスマホばかりみているんですが、私の悪口ばかりだったそうです。『森は何を考えているのか、バカじゃないか』と。菅さん以上に悪口ばかり。もうすぐ84になるが、こんなのは長い人生で初めて。森内閣でもこんなにひどくなかった」-。
緊急事態宣言が発令された今月7日、森会長は「不安はまったくない」と開催への自信を示したが、それが世間の反発を招いた。ただ、83歳の旗振り役は、「私がここで考え込んだり、迷ったりすれば、すべてに影響する。あくまで進めていく。これが私の最後の仕事。天命」と、あくまで前を向いた。
先週末に行われた複数の世論調査で、中止や再延期など今年の開催に否定的な意見が8割を占めた。会長自身にも葛藤がないわけではないようだ。組織委設立から今年で7年。毎年、年頭あいさつを行ってきたが「この新年のあいさつが最後のあいさつになることを期待しなければならない」と話し、午後に行われた講演会では「実は内心は、もしかしたらという気持ちがないわけじゃない」と、ポツリと言った。
それでも「私の立場では、今年難しいとは口が裂けても言えない。言えば、夕方のニュースから明日の朝刊に、“弱気”“難色”って出るだろう。ここでわれわれがためらったり、怯(ひる)んだり、ちゅうちょしたりすれば、全職員に影響する。全世界がそういう動きになってしまう」と、自戒するように話した。