「卓球・全日本選手権」（１５日、丸善インテックアリーナ大阪）

　男女シングルスの４回戦から６回戦までが行われ、上位シード勢が４回戦から登場した。男子は東京五輪代表の張本智和（１７）＝木下グループ＝が御内健太郎（シチズン時計）に４－３で逆転勝ちし、４年連続で８強入りを決めた。

　窮地をはね返すたびに張本がほえた。６回戦は第６ゲームで１０－１１とマッチポイントを握られ大ピンチとなったが、力一杯振り抜いたフォアドライブでしのぎ大絶叫。フルゲームに持ち込んで逆転勝利を決めると、飛び上がって「チョー」と叫んだ。

　「初日で終わってもおかしくない試合だったので、何とか次につなげられてうれしい。棄権したくなくても棄権となってしまう選手もいるが、全力で戦うことが大会（開催）への恩返し。それを体現できた」

　今大会は新型コロナウイルス感染防止の観点から、不要な声出しは控えるように日本協会が定めた。しかし、日本一を争う真剣勝負の場とあって、他の選手も声を出す姿が目立つ。張本も序盤は発声を控えていたが、厳しい戦況と極限の緊張感の中ではリミッターを解除。審判に何度注意されても、底力を発揮するには仕方なかった。

　「例年より抑えるつもりだったが、勝負事である以上、声を出すことが勝ちたい証しであり、相手への敬意だと思う」。確固たる勝負論を持つ１７歳は、試合後には頭を下げたが、「最大限できるのはあそこまで。うまくやっていくしかない」と理解を求めた。

　３年前は史上最年少制覇を果たしたものの、最近２年は重圧に敗れＶ逸。昨年１１月から腰痛に見舞われて練習できない時期もあったが、「五輪の年の全日本は特別」と、この大会に照準を合わせて準備してきた。

　「みんな強いし、誰に負けてもおかしくない。もしかしたら五輪よりレベルが高いかもしれない。負けて落ち込むより、全て出し切ってどうなるか、今年はそれを試したい」。声も精魂も全て出し尽くすことこそが２０２１年のテーマだ。