森会長、女性蔑視発言から1週間で陥落 東京五輪開幕まであと半年…直前で大黒柱交代
東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(83)が女性蔑視と取れる発言をした問題の責任を取り、辞意を固めたことが11日、分かった。12日午後からの評議員、理事を集めた合同懇談会で表明する。後任は日本サッカー協会元会長で、選手村村長を務める予定だった川淵三郎氏(84)の就任が確実に。これまでさまざまな問題が噴出してきた東京五輪は、開幕半年前に運営のトップが交代するという異常事態となり、開催に向けてさらなる難局に突入する。
これまで東京五輪の旗頭として幾度となく荒波を乗り越えてきた“キングメーカー”が、ついに船を下りた。3日の会合で女性蔑視発言をした森氏は、翌4日に謝罪、撤回したが、“逆ギレ”気味の態度が問題視され、批判が拡大。この日、周囲に「大事なのは五輪の成功だ」と話し、辞任する意向を示した。
森氏は当初は周囲の説得もあり、辞任を否定していた。しかし、国内外での拒否反応は収まらず。9日に「問題は終了」としていた国際オリンピック委員会(IOC)が「絶対に不適切」と新たに声明を出し突き放すと、10日には最高位スポンサーのトヨタ自動車など、スポンサー各社が遺憾の意を表明。ボランティアの辞退も相次ぎ、辞任が避けられない状況に追い込まれた。
後任は川淵三郎氏が確実。ただ、これまで政財界、IOC、スポーツ界のパイプ役としてさまざまな調整を担ってきた“要”の退陣は、コロナ禍でいろいろと課題が残る運営面で大きな打撃となる。大会における多くの事柄が森会長のトップダウンによって進められてきた。また、対IOCでもバッハ会長と信頼関係を築く一方で、簡素化においてIOC役員の厚遇削減をのませるなど一定の存在感を示してきた。大会関係者の中からは「森氏が院政を敷くということだろう」と、退任後も森氏が影響力を行使するとの見方が出ている一方で、「今回は完全に日本の失点。仮に森氏が裏で動くとしても今後、IOCの要求をはねのけられるのか」と、懸念も漏れた。
コロナ禍での五輪開催に約80%が中止、再延期を求める否定的な世論は、今回の問題で冷め切っており、かじ取りは難航が予想される。あるスポンサー企業からは「五輪のイメージは間違いなく低下した」と、ぼやいた。
ここにきて船頭を失った東京五輪という名の船。その目的地は、蜃気楼(しんきろう)のごとく輪郭がぼやけつつある。