【辻野隆三EYE】ブレイディのミスを誘ったあえて遅めのサーブ
「テニス・全豪オープン」(20日、メルボルン)
世界ランキング3位の大坂なおみ(23)=日清食品=が女子シングルス決勝で同24位のジェニファー・ブレイディ(25)=米国=を6-4、6-3で下し、2年ぶり2度目の頂点に立った。
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今日の大坂のプレーで一番進化を感じたのは第2セット、大坂が4-2でリードしていたサービスゲームだった。
大坂は4ゲームを連取したが、ブレイディが2ゲームを取り返し、勢いを取り戻そうとしていた。大坂はこのゲーム、サービスエースなどを含めて40-30でリード。ここでファーストサーブを速いフラットではなく、スピードを落としたスピンサーブを使ってきた。普通だったら勢いそのままに速いサーブを打つところだったが、あえて抑えたサーブを選択。ブレイディは予想外のサーブにその後のラリーで明らかに慌ててミスをした。
大坂は、ブレイディのリターンが自分のサーブのタイミングに合ってきているのに気付いていたのだろう。一番大事なポイントにあえて遅いサーブを使って切り抜けた。このゲームを取って5-2。落としていたら4-3で、展開は変わっていたかもしれない。
こんな細やかな配球も考えられる戦略面の向上は、大きい。さらに、試合の中での自分の盛り上げ方もすごくうまくなっている。いずれもトップ選手の条件であり、大坂は昨年から比べてものすごく進歩した。
これまでハードコートでの活躍が中心で、クレーの全仏オープン、芝のウィンブルドンでも勝てるかというのが関心事となるが、今の大坂は、ウィンブルドンはこのプレーなら間違いなく勝てる。クレーコートはスピンのストローカーへの対策やドロップショットの必要性があるが、当然これから取り掛かって克服するに違いない。大坂が真の女王として君臨する年になるのではないかと思う。(元デ杯日本代表、NHK全豪オープン解説者)