武井壮「五輪で選手の人生が変わる」 開催、延期、中止…それぞれ「最善の形」への議論を
デイリースポーツのボクシング評論「拳心論」で健筆を振るう元世界3階級制覇王者、長谷川穂積氏(40)が、現役時代から親交が深く兄貴分と慕うタレントの武井壮氏(47)と、コロナ禍で厳しい状況に置かれているスポーツの現状について真剣に考察した。陸上の元十種競技日本王者の武井氏と、不透明な状況の東京五輪についてなど、多角的に語り合った。
◇ ◇
-五輪開催の可否など、コロナ禍でスポーツ界も揺れている。
長谷川「壮さんがSNSなどで発言されている言葉の威力をめっちゃ感じるんです。それで今回はお話を伺いたいと思いました」
武井「立場によって意見はみんな違うよね。スポーツをしない人も普段ならスーパープレーに興味を持ってくれることもあるけど、苦しんでいる時には余裕がない人もたくさんいる。難しいよね」
長谷川「僕はスポーツは平和な時にやるべきもので、震災やコロナで日本が大変な時には一番必要ないものじゃないかって。五輪は状況が落ち着いてからやった方が盛り上がるんじゃないかなとずっと思ってきました」
武井「今の状況を見れば、やりましょうとは誰も言えないよね。ただ、僕らは五輪で選手の人生が変わることを知っている。穂積は世界王者になって3階級制覇して人生が変わった。それがなかったら自分の人生はどうなってたんだろうと思うと、正直怖くない?」
長谷川「そう思います」
武井「中には10年以上かかって日本代表になった人もいて、オリンピアンやメダリストという肩書があるかないかで一生が変わる。それを考えると元アスリートとしては、どんな形でもいいからやった方がいいとは思うよね。中止しても開催しても誰かのマイナスにはなる。その中で納得できるような最善の形ができるのか、話はするべきだと思う」
-開催方法は。
武井「一般の方たちに感染リスクを負わせないように対策を万全にして、なるべく選手は選手村滞在に限定して競技が終わったらすぐ帰国する。PCRなどの検査は、審判も係員も全員同じように万全に。もし観客がいなくても、順位だけはつけてあげてほしい」
-無観客は課題も。
武井「チケットの返金の問題はあるけど、僕はそこが一番助け合いかなと思っていて。チケットを持った人だけが特別に見られる映像、例えば陸上ならスタートやゴールラインの真後ろで選手がリアルに入ってくるところとか、ボクシングならセコンドの視点から見られるとか、テレビと違う特典映像が見られるようにして、チケットは保持してもらうとか。100点の答えは存在しないけどね」
長谷川「なるほど、技術で補てんする」
-費用の問題は。
武井「五輪はお金がかかると言われるかもしれないけど、やれば回収することもできる。もし中止を決めたら今まで投資した分を一つも取り返せない。経済的ダメージが大きすぎるんじゃないかな」
-回収とは。
武井「コロナ禍で苦しかったけど何とか開催し、そこで優勝者が決まったという映像は、過去の五輪にない貴重なものになる。その映像の権利は、世界的に集金、回収できる価値を持つ。中止によってそれらが未来永劫(えいごう)全てなくなるのは損失が大きすぎると思う」
長谷川「なるほど。僕はそんな長い目で見られなかったですね」