武井壮の願い…選手に五輪の責任を負わせないで リスクを背負ってプレー
デイリースポーツのボクシング評論「拳心論」で健筆を振るう元世界3階級制覇王者、長谷川穂積氏(40)が、現役時代から親交が深く兄貴分と慕うタレントの武井壮氏(47)と、コロナ禍で厳しい状況に置かれているスポーツの現状について真剣に考察。陸上の元十種競技日本王者の武井氏は、選手へ五輪の責任を追及すべきではないと持論を展開した。
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長谷川「不透明な状況の中で、五輪開催に罪悪感を持つ選手もいるようですね」
武井「私たちのせいでと言う選手がいる。でも、選手に悪いところは一つもない。彼らはアマチュアであっても競技を自分の仕事、責務としてやっている子が多い。感染者が0になることはもう地球上でないと思うので、何か起きた場合に選手に責任を追及することだけは間違い。責任を感じさせないために、限りなく感染を0に近くする議論を外側のわれわれがして、選手もリスクを負って競技をしてくれるんだと思ってあげないと。お前らのせいで、と言うのは間違ってるよ」
長谷川「選手が申し訳なさそうにプレーするなんて」
武井「五輪に限らず世界中でみんな仕事をしている。五輪は特別なものだけど、選手は普通に仕事している人のように毎日トレーニングをすることが業務で、その一つの区切りとして五輪があるだけ。だから、あまりに特別視してやめるべきだという議論をするのは建設的ではない気がする。共存しつつ、こういうイベントを成功させる方法があるかどうかを考えるのは、この時代にわれわれが進化するチャンスなのかもしれないね」
-コロナ禍で競技を引退する選手も出た。競技会や興行の自粛も多い。スポーツが止まってしまう不安は。
武井「この状況でスポーツが止まるのは商業としての未発達だと思う。マネタイズ(収益化)できるように運営していくのがスポーツが成長する鍵で、他の業界も同じこと。飲食業などいろんな企業がそれを何とか乗り切らないといけない。スポーツだけ通常営業というわけにはいかない。穂積はジム経営者として思うことがあるんじゃないの」
長谷川「コロナの第1波の時は自分も大変でしたが、換気や除菌など感染予防を徹底して、人数制限もして、来てくれる人がいる限りジムを開け続けました。第2波、3波が来て、今も新規入会者は1日2、3人来てくれています。皆さんも現状に対応できるようになってきたと思います」
武井「僕はこういう事態になる前から、選手は競技の成績でもらうお金だけじゃなく自分の生活をたてるべきだと考えてメッセージを送っていた。スポーツ団体も収入をどれだけ豊かにできるかを考えて運営すべきだと思う。今回五輪が中止になったら、トップ選手の半分くらいは人生が傾くよ。何の回収もできなかったら、選手のスポンサーは来年以降激減すると思う。スポーツは本来、穂積が言うように娯楽で平和な時のためのものだけど、仕事として人生として競技と向き合っているならどういう形でコロナ禍を生き抜くのか、収入を確保できるのか、新しい形を生まないといけないよね」