鈴木健吾が日本新記録で初優勝 最後の琵琶湖での大会、驚きの2時間4分台で有終の美
「びわ湖毎日マラソン」(28日、大津市皇子山陸上競技場発着)
琵琶湖を舞台に開催される最後の大会が行われ、鈴木健吾(25)=富士通=が2時間4分56秒の日本新記録で初優勝した。昨年3月の東京マラソンで、大迫傑(ナイキ)がマークした2時間5分29秒を33秒更新。日本選手史上初の2時間4分台を記録した。びわ湖毎日マラソンを日本選手が制するのは2002年の武井隆次以来。好条件下でのレースで好記録が相次いだ中、2024年パリ五輪に向け、新星が飛び出した。第76回を数えた歴史ある大会は大阪マラソンと統合され、22年からは大阪に舞台を移して開催される。
驚異的な速さで競技場に戻ってきた鈴木はサングラスを取り、両拳を掲げてゴールテープを切った。“最後のびわ湖”で日本人初となる2時間4分台での日本新記録の快挙。「タイムはすごくびっくりしている。優勝争いをしたいと思っていたのですごくうれしい」と喜びをかみしめた。
勝負は終盤、36キロの給水地点だった。「自分が取り損ねたのでそのタイミングで。他の選手が給水を取っている間にいこうと」。3人で優勝争いを繰り広げていたが瞬時の判断でスパートをかけて後続を突き放した。
その後もペースは落ちることなく加速。独走時は「沿道の人から『日本記録いけるぞ』と言ってもらって、後半走っていたら次は『5分切れるぞ』と。そこで『そんなにいいのか』と思って最後の1キロは5分切ろうと思って走った」。天候も日本記録更新を後押しする好条件で、終盤は1キロのラップタイムをほとんど2分50秒前半でまとめ上げた。
継続は力なり-。まさにこの言葉を体現する。神奈川大時代に箱根駅伝で脚光を浴び、4年時の18年東京で初マラソンに挑戦。しかし、富士通入社後は故障が続き1年間レースに出場できず。19年のMGCでは五輪切符を逃し、昨年の同大会も結果が出なかった。悔しさを糧にスピード、筋力強化を図り、特にこの1年は週1回必ずウエートトレーニングを実施。福嶋正監督も「自分のためになると思ったことは継続する。継続する力がある」と絶賛するほどの努力家だ。
また、東京五輪代表で今大会はケガで欠場した中村匠吾(富士通)の存在も大きかった。鈴木は年明けに中村の合宿に参加。「練習の中でも余力があって、質の高い練習をしている。少しでも身近にいるので吸収しようとやっていた」と必死に食らいついた結果が好タイムにつながった。
日本記録保持者となったが「実感はあまりない」と苦笑。「これからもこつこつとこのタイムにおごらずに走っていきたい。好きなことを仕事にさせてもらっている間は、やれるだけやっていきたい」と先を見据える。次なる目標はパリ五輪。「代表に選ばれることが今の1番の目標。パリでは絶対決める」。“最後のびわ湖”で名を刻んだ若きランナーが、次は世界に名をはせる。