羽生結弦 世界選手権「何かしら意味のあるものに」五輪枠の獲得貢献に意欲見せる
22年北京五輪の枠取りが懸かるフィギュアスケートの世界選手権が24日、ストックホルムで開幕する。4年ぶりの王座奪還を目指す男子の羽生結弦(26)=ANA=は初参加した22日の公式練習で、ループ、サルコー、トーループの4回転ジャンプを跳ぶ上々の動きだった。23日午前の練習は回避した。大会は無観客で、外部との接触を断つ「バブル」の方式で開催。男子ショートプログラム(SP)は25日に行われる。
練習用リンクで、ストックホルム到着後初めての練習を終えた羽生の第一声は「なんか、割と淡々としているというか…」だった。大舞台を前にしながら、言葉通りの淡々とした口調。「自分自身いろいろ思うことはあったんですけど、現地に来て滑るからには、何かしら意味のあるものにしたい」と率直な思いを明かした。
22日にストックホルム入りしたが「来るときに実は地震があって」と羽生。搭乗予定だった飛行機を急きょ変更するなど、アクシデントに見舞われた。「ちょっと大変でした。練習プランとしては、ちょっとずれているかなとは思う」と羽生。加えて「バブル」の環境下での大会になるが「氷ともしっかり対話ができた。いい感覚で最後終われたかな」。状態は上向きだ。
22年北京五輪の枠取りが懸かる今大会。14年ソチ五輪の枠取りが懸かった13年大会は4位、18年平昌五輪へ向けた17年大会は優勝と、羽生はこれまでいずれも最大の3枠獲得に貢献してきた。「枠取りに関しては最大限貢献したい。僕にとっては今のところそれだけですかね、この大会については」。北京五輪への道を自らつなぐことこそ、はるばる海を渡った理由だ。
だからこそ、注目が集まるネーサン・チェン(米国)との“直接対決”については「結果出てから考えればいいかなっていう感じ。今回結果結果っていう感じがあまりなくて」と羽生。以前は「リスペクトがあるからこそ勝ちたい」などと語っていたが、闘志や王座へのこだわりはどこか薄いように見える。
羽生が願うのは「とにかく無事に。健康な状態でこの試合を終えられたらいいな」。ぜんそくを抱える羽生にとって「健康」は何物にも代え難いもの。羽生にしか見せられない演技を完遂することこそ、今大会最大のミッションでもある。
「目指しているいい演技を毎日一つずつ重ねていって、グラデーションのように良くなっていってくれれば」。気持ちを過度に高ぶらせるでもなく、王座奪還への強いこだわりを見せるでもない。そんな羽生が積み重ねた先に描かれる、今大会での演技。リンクは一体どんな羽生色に染まるのか。