福岡国際マラソン消滅 瀬古利彦氏「寂しい」宗兄弟との激闘など思い出深く…
日本陸上連盟は26日、国内主要マラソンの1つで、毎年12月に開催されてきた福岡国際マラソンについて、今年12月の第75回大会を最後に終了することを発表した。スポンサー離れなどが要因。日本陸連の尾県貢専務理事は「福岡国際マラソンにつきまして、今年12月5日に開催される第75回大会を持って終了することといたしました」と、発表した。
3連覇を含め、4度の優勝を誇った瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダーは、陸連を通じて「私は4回優勝させていただいて、福岡国際マラソンに育ててもらったという自負もあるので、この大会がなくなってしまうと私自身の歴史もなくなってしまうような気がして、すごく寂しいです。我々の年代のマラソン選手で福岡国際を知らない人はいないでしょう。海外の選手も、福岡国際は世界一を決めるレースだと思っていたと思います。福岡国際の歴史がそのまま世界のマラソンの歴史だったと言えます」と残念がった。かつて世界最強ランナーとも言われた瀬古氏。福岡での圧倒的な強さも、その要因だった。「5回出場した中で特に思い出に残るのはモスクワ五輪代表の座もかかった1979年の宗茂・猛兄弟と3人で競って平和台陸上競技場に入った大会。40キロから一度は宗猛さん、茂さんに置いていかれ『もう負けたな』と思ったけれど、あきらめずに粘ったら追いついて優勝できた劇的な展開でした。あきらめてはいけないという『マラソンの真髄』を覚えたこのレースの経験が後にもずっと繋がりました」と、宗兄弟との激闘の思い出を振り返った。
福岡国際は1947年に第1回大会が開催された、世界陸連公認のフルマラソン。世界陸連からは最高位のゴールドラベルの認定が与えられている。60~80年代には世界記録も2度樹立されるなど、高速コースとして知られ、有力選手も集い、かつては「非公式の世界選手権」とも呼ばれるほど世界的にも評価の高い大会で、数々の名選手も輩出。近年でも東京五輪代表の大迫傑(ナイキ)や、服部勇馬(トヨタ自動車)らが駆け抜けた。昨年、世界陸連から陸上世界遺産に認定されたばかりだった。
国内主要マラソンでは同じく男子の伝統大会だったびわ湖毎日マラソンが今年2月の第76回大会を持って終了。大阪マラソンと統合された。福岡国際とびわ湖毎日はともに参加条件が厳しく、トップランナーが集うエリートマラソン。ランニングブームにより、一般ランナーも参加できる市民参加型マラソンの東京マラソンや名古屋ウィメンズマラソンが人気となる中で、伝統ある大会が過渡期を迎えている。尾県専務理事は「大会を取り巻く情勢は念々厳しさを増しており、朝日新聞、テレビ朝日、主催者は大変な苦労を重ねて開催してまいりましたが、今後の見通しを踏まえ、継続は困難との結論に至りました」と、説明した。