「五輪中止」響いた国立…「怖い」「当然」…不安 理解 選手に交錯した思いとは

 東京五輪の陸上のテスト大会「READY STEADY TOKYO」が9日、大会のメーンスタジアムでもある国立競技場で開催された。新型コロナウイルスによる緊急事態宣言下の中、無観客で開催された一方で、会場周辺では開催中止を求める市民団体によるデモが行われ、物々しい雰囲気に包まれた。

 約100人のデモ参加者は「人殺しのオリンピックは即刻やめろ!オリンピックより命が大事だ」などと、新型コロナウイルスが感染拡大していることなども踏まえて大会中止を訴えた。シュプレヒコールは、音楽や声援風のBGMが流れるフィールド内ではかすかに聞こえる程度だったが、公道に近い取材エリアや、サブグラウンドでははっきりと響き渡り、「怖い」とつぶやき、不安そうに外の様子をうかがう選手の姿もあった。

 理解を示す選手もいた。女子5000メートルに出場した新谷仁美(積水化学)は「デモは当然だと思う。彼らも国民。私たちアスリートは国民の理解と応援、サポートがあって成り立つ職業だと思う。無視して競技するだけなら、それはアスリートではない。応援してくれる方だけと向き合うのでは、胸を張って日本代表とはいえない」と、不安や批判を真正面から受け止めた。

 そして、五輪内定者として「スポーツで世界が救えるならば、とっくに救えている。命よりも大事なものはない。人としては今年の五輪開催には反対。ただ、アスリートとしての答えは分からない」と、葛藤を口にした。

 前日の会見でも話した、五輪参加選手への「別枠」ワクチンの接種についても「別でとっているものだと言われても、行き届いていない人がいるのに、優先というのは間違っている」と否定的な見解を示し、現在の開催への空気を「強行突破のように思える」と、苦言を呈した。

 開幕まで残り2カ月半に迫る中、テスト大会で示された日本における五輪を取り巻く現実。夢舞台の輪郭は、いまだはっきりとしない。

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