19歳・橋本大輝が涙の五輪初切符「怖かった」 2位と0・136差、重圧乗り越えV
「体操・NHK杯」(16日、ビッグハット)
東京五輪代表選考会を兼ねて男子が行われ、全日本選手権覇者の橋本大輝(19)=順大=が合計259・530点で初優勝し、0・136点差の2位に入った萱和磨(24)=セントラルスポーツ=とともに五輪切符を獲得した。橋本、萱とも初の五輪代表入り。団体の残り2人は、6月の全日本種目別選手権(高崎)までの成績でチーム貢献度の高い選手が選出される。
エースと呼ばれるための最後の試練を真っ向から受け止め、打ち勝った。優勝インタビュー。極限の緊張感から解き放たれ、橋本の目には涙がにじんだ。
「怖かった」-。
4月の全日本を予選7位から世界金メダル級ハイスコアの大逆転で制した19歳を、追われる重圧が襲った。今季不安定なあん馬をまとめ切り、跳馬も大技ヨネクラから跳躍途中で半回転少ないロペスに変更する神業で着地をピタリ。しかし、終盤の平行棒の着地でマットの外まで飛び出る痛恨のミス。萱、谷川の猛追に遭い、最後の鉄棒を前に、2位谷川とわずか0・004点差、3位萱とも0・603点差だった。
落下すれば負ける重圧の中で、最終演技者で鉄棒を握った。転回技で止まりかけるピンチもあったが、何とか乗り切り、着地も踏みとどまった。最後は2位の萱と0・136点差。紙一重しのぎ切った。
8年前、東京五輪招致決定の時は小学生。「東京で開催されるんだ、ぐらいの気持ちだった」。5年前、リオ五輪で日本が団体金メダルに輝いた時は中学生。「夢のまた夢だよな」と思った。市船橋高で急速に頭角を現し、水鳥強化本部長に「代表を目指せ」と言われ、高校2年生で初めて世界を意識した。誰もが驚くシンデレラボーイの急成長は夢舞台に到達。ただ、無限のポテンシャルを持つ19歳が描く未来予想図はまだまだ壮大だ。
「こんな我慢した試合は初めて」と振り返った苦闘を終え、澄んだ目で言った。「すごく大きな経験になった。五輪では自分がエースとして団体、個人総合で金メダルを取りたい」。また一つ、殻が破れた音が聞こえた。