“戦う医学生”朝比奈沙羅が3年ぶり世界女王 二足のわらじで快挙、選出疑問の声に発奮
「柔道・世界選手権」(12日、ブダペスト)
柔道女子78キロ超級で、18年世界女王の朝比奈沙羅(24)=ビッグツリー=が、日本人対決となった決勝で冨田若春(24)=コマツ=を指導3の反則で下した。昨年4月からは医学部生として学業との両立を図りながら、3年ぶり2度目の金メダルを獲得した。
昨年4月から獨協医大に通う“戦う医学生”が、学業に励みながら柔道世界一に返り咲く快挙を果たした。相手に圧力を掛けながら、払い腰、支え釣り込み足でなぎ倒す本来の柔道を発揮。準決勝はロンドン五輪女王で世界ランク1位のオルティス(キューバ)を延長優勢勝ちで下すと、決勝は初出場の冨田との延長戦の死闘の末、冨田が足を負傷。勝ち名乗りを受けた後は、冨田を背負って一緒に退場した。
朝比奈は東京五輪代表は逃したものの、柔道と医学部という“二刀流”で世界選手権代表に選出された。ただ、この1年は学業のために代表合宿に参加しないことも多く、昨年末の全日本選手権では初戦敗退。さらに選考会にも出場しなかったことから、一部の強化委員からは選出に疑問の声も出たが、「ひどい言葉を結果で黙らせてやろうという気持ちでやってきた。(周囲からは)『医学部ですごいね、頑張ってるね』と言う声が多かった中で、甘やかされていたと思うので、批判を受けて、もう一度(闘志に)火が付いた。あとは試合できちんと結果を出せるように」と発奮材料に変えた。
今年5月からは大学の部活動の一環としてラグビー部の門もたたいた。元々ラグビー好きを公言していたが、それが高じて同大の部活動にマネジャー兼プレーヤーとして入部。「プレーは現役中にできないが、ラグビーに携われたらいい。柔道を頑張るのがメインだけど、ラグビーもやるなら場所をつくると言っていただいた。世界選手権や五輪が終わった後、オフの日だとかに(ラグビーの)部活動に出られたらいい」。学生生活も充実している24歳に本来の強さが戻ってきた。