【朝原宣治の目】激戦の陸上男子100メートル3枠争い 自己ベスト9秒台が4人

 7月23日に開幕する東京五輪まで、23日であと1カ月。各競技の代表がほぼ出そろう今月末を前に、陸上の五輪代表選考会となる日本選手権が24日から27日まで大阪市のヤンマースタジアム長居で開催される。最大の注目は9秒台の自己ベストを持つ4人をはじめ、有力選手たちが3枚の切符を競ってしのぎを削る男子100メートル。史上まれにみるハイレベルな決戦の行方を、同種目の元日本記録保持者で2008年北京五輪400メートルリレー銀メダリストの朝原宣治氏(49)が展望した。

  ◇  ◇

 今のところ日本記録を出した山県選手が一番調子が良さそうかな、と思っています。もっとも、サニブラウン選手が不気味な存在です。見た感じは調整が遅れているようで、久しぶりのレースとなった5月は体が締まっている感じではありませんでした。

 ただ、あそこで走れたということは、急ピッチで調整して、ある程度まで戻してきているのではないでしょうか。高いポテンシャルを持つ選手なので、ピーキングができていたら、ほかの選手は簡単には勝たせてもらえないでしょう。

 サニブラウン選手はいつも急激に速くなったりします。5月のレースで大丈夫となったとして、うまく調整していけば面白いことになるでしょう。とはいえ、優勝を争う存在かと問われれば、それは分かりません。

 山県選手は、さほど追い風、向かい風の影響は受けないような気がします。本当にいい状態であれば、無風近くでも9秒台が期待できるかと。9秒95だった布勢スプリントはスピードをコントロールし切れていませんでした。本人も記者会見で語っていましたが、最後は捌(さば)き切れていなかったので。捌き切れて、日本選手権もトップスピードが出れば9秒台が見られるのではないでしょうか。

 布勢スプリントを10秒01で走った多田選手は、今季絶好調です。体重が軽く、特に追い風を受けるとすごく速い選手です。カギはやはり前半でしょう。

 桐生選手は4月の織田記念国際が良くなくて、5月の五輪テスト大会は予選でフライングをして失格となりました。予選でやめた布勢スプリントは不安を払拭(ふっしょく)するためだったと思いますし、一本で吹っ切れて日本選手権に臨めたらいいのではないでしょうか。

 小池選手は9秒98で走った2年前のようなきれがなく、まだしっくりきていない感じです。会心のレースができていなくて、本人はもやもやしているのではないかと。

 ケンブリッジ選手は10秒03を出した昨年のような動きが取り戻せたら面白くなります。昨年の動きの方がいいし、修正をかけて日本選手権に臨むと思います。

 順位も求められる戦いのポイントですが、結局は自分の走りを貫けるかどうかです。いくら速い選手が周りにいようとも、いくら多田選手に前半いかれようとも、冷静に自分の走りを貫けた人が勝つと思います。逆に言うと、あまり他人を気にしないことです。自爆が一番良くありません。前に出られ、必死で追いかけたらフォームが乱れた、ということは避けなくてはいけません。

 日本選手権はピーキングが命です。2日間なので、予選、準決勝、決勝と、それぞれの戦い方がポイントになります。例えば準決勝は決勝につながる大事なレースですが、力を使い果たすと決勝で戦えません。予選から決勝に向けて調子が上がるレースをしなければいけません。2日目に調子がぴったり合うように、予選は刺激のために使うとか…。準決勝で9秒台を出しても決勝で失敗すれば負けてしまいますから。

 ヤンマースタジアム長居は走りやすい競技場です。向かい風とかでなければ面白い勝負が見られるでしょう。(2008年北京五輪男子400メートルリレー銀メダリスト、「NOBY T&F CLUB」主宰)

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