【朝原宣治の目】多田選手 スピード持続の要因は骨盤と股関節の連動
「陸上・日本選手権」(25日、ヤンマースタジアム長居)
東京五輪代表選考会を兼ねて行われ、男子100メートルは多田修平(25)=住友電工=が追い風0・2メートルの決勝を10秒15で初めて制し、東京五輪代表に決まった。自己ベストが9秒台の4人に見事先着し、夢舞台への切符をつかんだ。デーデー・ブルーノ(21)=東海大=が10秒19で2位。山県亮太(29)=セイコー=が10秒27の3位で、3大会連続となる五輪代表入りを決めた。小池祐貴(26)=住友電工=が4位で五輪代表入りが有力となった。
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多田選手は、差されるとしたら山県選手ぐらいかな、と思っていました。足のすねを地面に直角に突き刺すようにしてプッシュしていく走り方をします。蹴るという動作がほとんどありません。
足が後ろに流れる前にうまく切り返すのですが、足の回転だけで切り返すのではなく、きちんと骨盤とか股関節をうまく連動させて切り返しているところが今回は見えました。後半で失速していたときは、足の回転は出るけど股関節などが連動していませんでした。
山県選手が中盤伸びなかったのには驚きました。9秒95を出してから結構ダメージがあるのかもしれない、と思って見ていました。
桐生選手はスタートから体が浮いていました。アキレス腱の状況もあると思いますが、中盤で得意とするトップスピードが上がりませんでした。サニブラウン選手は、このレベルが高い戦いにおいて、準備不足ではなかなか勝てません。
2位に入ったデーデー・ブルーノ選手は、スタートはそれほど得意ではありません。うまく加速し、冷静に走っていました。
多田選手がレース後に涙を流していましたが、五輪よりも緊張するのが選考会です。ものすごい重圧で迎えた中、勝ちきったことでやっと解放されたからなのでしょう。(2008年北京五輪男子400メートルリレー銀メダリスト、「NOBY T&F CLUB」主宰)