東京五輪に出場する陸上男子短距離代表が９日、山梨県富士吉田市内での合宿を公開した。右アキレス腱痛の影響で、６月の日本選手権男子１００メートルで５位に終わり、個人種目での出場を逃した元日本記録保持者の桐生祥秀（２５）＝日本生命＝はリレー要員として参加。けがの完全回復を宣言し、悲願の金メダル獲得に向け、アンカーにも名乗りをあげた。日本選手権１００、２００メートル２位の新星デーデー・ブルーノ（２１）＝東海大＝も桐生とのメンバー争いに闘志を燃やした。

　スプリンターとして、１つの夢が破れた日本選手権から２週間。すべてを吹っ切って、日本のために戦おうとする桐生の姿があった。あの“人類最速の男”ボルトを驚かせたリオ五輪での銀メダルから５年が経ち、悲願の金メダルの期待が懸かるリレー侍。この間、すべての国際大会でメダルに貢献してきた２５歳は「世界陸上や五輪で全部メダルを持っているのは僕だけ。経験やスピード感を味わってきた。しっかりアピールして、与えられた走順で最高のパフォーマンスをしたい」と力強く宣言した。

　１３年の開催決定から、ずっとＴＯＫＹＯでの１００メートル決勝進出を目指してきた。日本選手権敗戦後には「いったんひと区切りかな」と吐露した。無念の思いがないかといえば、嘘になる。この日、１００メートル代表の選手たちがスタート練習を行う姿をみて、「正直いいなと思うところはある」と認めながらも、もう腹はくくった。「完全に吹っ切れている。引きずっていたら、チームの雰囲気が悪くなる。リレーで選んでいただいた。最高のパフォーマンスをみせるとこが与えられた仕事」と前を向いた。

　心配された右アキレス腱も、この日スピードを上げた練習に取り組み、「アキレス腱は気にならなかった。痛みはほぼゼロ。それが１番の収穫」と回復を強調した。

　注目は走順だ。スタートダッシュが持ち味の日本選手権覇者の多田が１走、卓越したバトンワークと直線での走力がある日本記録保持者・山県の２走が有力。桐生は３走で不動の地位を築いてきたが、メンバー入り有力候補の小池も曲走路を得意としており、アンカーでの起用が有力視される。「どっちもできる自信はある。自信満々で走りたい」。みんなの、そして日本の夢を、ゴールへ運ぶ。