【東京五輪 祭りのあと】後の祭りに残るもの

 新型コロナウイルス禍で1年延期となった東京五輪が8日に閉幕した。大会中止を求める声が根強くある中で、世界各国・地域のアスリートたちが死力を尽くし、関係者がさまざまな思いを抱えながら支えた19日間。デイリースポーツの五輪取材班が「祭りのあと」と題し、大会全般の課題と収穫などを多角的に検証する。最終回は、東京五輪の開催にかかった様々な費用について論じた。

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 もう一つの夢舞台である24日開幕のパラリンピックが終われば、重たい現実に再び焦点があたることになる。

 大会の1年延期と新型コロナウイルス対策で、東京五輪・パラリンピックの開催経費は昨年末の時点で1兆6440億円に膨らんだ。このうち大会組織委員会は7210億円を担い、東京都は7020億円、国は2210億円を分担する計画となっている。

 これらの大会経費とは別に、東京都や国が負担する「関連経費」がある。都は暑さ対策や既存施設のバリアフリー化などの費用を7000億円超としており、国は警備などにかかる費用も担う。これらを合わせ、大会経費は約3兆円とも言われる。

 一方で海外観客の受け入れ断念や、大半を無観客としたことで、都が約2兆円と見積もっていた直接的経済効果は1兆6000億円程度となる見込み。ただ、これも大会期間中に発出された緊急事態宣言による経済的損失約2兆2000億円の方が上回る。

 今後のコストもかさむ。総工費1600億円で建てた国立競技場は、今後年間維持費24億円がかかる。このほか、都が建設したアクアティクスセンターは約10億円、有明アリーナは約9億円。それぞれスポーツやコンサートなどのイベント開催での収入を見込んではいるが、コロナの感染拡大が続く現状では、今後の見通しは不透明。負の遺産としてのしかかる可能性がある。

 そして、大半の会場で無観客となった影響により900億円のチケット収入も大半を失った。組織委幹部は「赤字になることは間違いない」と話す。招致段階の立候補ファイルでは、組織委が赤字となった場合は都が穴埋めし、都が賄えない場合は国が対処することになっている。

 パラ終了後の秋に本格的に協議が始まる見通しだが、すでに丸川五輪相が「都の財政規模を踏まえると、組織委の資金不足を補てんできない事態はおよそ想定しがたい」と話し、小池知事は「想定外の事象が生じた場合は、IOC(国際オリンピック委員会)や政府、組織委を含めて協議が必要になると理解している」と、押し付け合いの前哨戦は始まっている。大会関係者は「基本的に都が払うことになる」と指摘するが、さらなる公費負担の増大は都民の理解を得る必要があり、調整は難航必至だ。

 IOCはもはや、われ関せず、だ。バッハ会長は言った。「五輪大会への投資は公平な形で共有されている。都民が今後何世代も恩恵を受ける。選手村やスポーツ施設はコストとは言えない」。祭りの後か、後の祭りか。大会のレガシーとして残るものは果たして…。(デイリースポーツ特別取材班)=おわり=

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