東京五輪・パラリンピック組織委員会は２８日、都内で会見を行い、２６日に発生した東京パラリンピックの選手村を巡回する自動運転バスと視覚障害を持つ選手の接触事故について謝罪した。ただ、組織委は事故を把握していたというものの、２７日の定例会見では事故について公表しなかった。高谷正哲スポークスパーソン（ＳＰ）は「事実確認に時間を要した」と説明した。

　事故に遭った柔道男子８１キロ級の北薗新光（３０）は視野狭窄（きょうさく）の障害を持っており、２６日午後２時頃、選手村内の横断歩道を渡ろうとしていたところ、交差点を右折中の自動運転バスと接触した。転倒して頭部などを負傷したが、診断を受けたところ外傷はなく、ＭＲＩ検査でも異常はなかったという。ただ、その後本人が体調不良を訴えたため、ドクターが脳振とうの可能性があると考慮し、大事を取って２８日の試合は欠場した。

　当初は試合に出場する意向を示していたといい、組織委の中村英正統括は「もっと早く（公表）すべきだったと考えているが、何が起きたか確定させようという点と、（当初は）北薗選手が出場する可能性があると聞いていたので、見送ると聞いて（情報の）整理に時間がかかった」と、出場可否も考慮しながら情報を精査していたと説明。高谷ＳＰも「事実確認にかなり時間を要していて、いまだに確定していないこともある。関わっている団体も多く、どこまで何をお伝えできるかに非常に苦慮し、公表が遅れたのが全て」と“隠ぺい”については否定した。

　事故のあったバスはトヨタ自動車が開発した自動運転の電気自動車「ｅ－Ｐａｌｅｔｔｅ」で、村内を２４時間巡回。また、トヨタ社員のオペレーター２人が乗っていた。

　現在、警察やトヨタとともに事故原因を調査しているが、北薗本人は事故の際に転倒したものの「バスに接触したかはわからない」などと話しているという。また、事故を受け、当該バスの運行は停止中。中村統括は「ｅ－Ｐａｌｅｔｔｅの運行は選手村であることも踏まえて一層の注意を払っていたが、今回の事故が起きた。きちんと原因を究明して、安全性をより確保するとともに、北薗選手へのケアにも取り組んでいきたい」と話した。